2008年04月22日

『パークアンドラブホテル』 TEXT by 水上賢治

 すでに新聞各紙でも報じられたように本作は今年のベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞を受賞した熊坂出監督の長編デビュー作。よく言われることではあるが、海外映画祭で賞を獲ったからといって作品が傑作かどうかは別。また逆もしかりで、どんなに傑作映画であっても賞を獲るとは限らない。でも、この作品の熊坂監督は賞を獲るに値するすばらしい才能の持ち主。長編第1作とは思えない新人離れした、紛れもない“映画”を我々に見せつけ、体感させる。

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(C)PFFパートナーズ

 ありきたりな映画タイトルが氾濫する昨今、題名からしてすでに熊坂監督は高いセンスを感じさせる。訳すまでもなくタイトルは“公園とラブホテル”。なんともつかみどころがないが興味をそそるタイトルだが、種を明かすと屋上を公園として一般人に開放しているラブホテル(ほんとは連れ込み宿といったほうがしっくりくる)が舞台。すべり台もブランコも親切にあるこの異色のホテルを切り盛りする50代とおぼしき女性オーナーと、ここへ吸い込まれるように足を踏み入れた10代、20代、30代の女性の袖の触れあいと心象風景が描かれる。

 その中で個人的に思わず脱帽したのが、熊坂監督のもつ時間の感覚とそれの映像への置き換え方。例えば、人間は明るいところで電気を一気に消すと、一瞬真っ暗になってだんだん目がなれて周囲がぼんやりと見えてくる。熊坂監督は、こういったことを見事に映像で表現しきる。もしかしたら別にこだわらなくてもいい箇所かもしれない。でも一番無駄と思われるところに、こだわってこそ映画。それを踏まえると、この作品はとてつもなく豊潤な映画体験をさせてくれる。こういったリアルな情景作りをする監督はそうそういない。そういえば受賞緊急記者会見に出席したとき、出演者が熊坂監督から「リアルに」と常に忠告されたと語っていた。

 また、もう1点感心させられたのが物語。様々な世代の女性が登場するのだが、実に彼女たちの心情が克明に描き出される。正直、物語だけで見たら男の監督が撮ったとは思えない。すでに結婚されているとのことだが、熊坂監督は女性マイスターかも。そんなことを思わせるほど、この作品は正真正銘の女性映画でもある。それだけに、“学ぶこと多し”ということで、もしかしたら男性諸君こそ必見かも。

(関連サイト)
『パークアンドラブホテル』公式サイト
http://www.pia.co.jp/pff/park/
※4月26日(土)よりユーロスペースにてロードショー

投稿者 mtoda : 23:47 | コメント (0) | トラックバック (0)

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