2007年12月28日

『かぞくのひけつ』 TEXT by 水上賢治

“人情喜劇”。日本映画監督協会新人賞に輝いた新鋭、小林聖太郎監督が手がけた本作は、このワードがぴったりくる作品だ。劇場スケジュールの取り合いがあるほどで、未公開のままお蔵入りする作品も実は数え切れない現在の日本映画界。それほど多くの作品があるものの、日本映画でこういった市井の人々のあくまで庶民的な生活をユーモアな視点をもって描いたタイプのものは少数。もしかしたら“人情喜劇”なんて正面きって言える作品は、最も少数の部類に入るのかもしれない。

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(C)2006シマフィルム

主人公は“ザッツ・大阪人”ともいうべき家族。長らく東京で暮らす自分を含む関東人たちにとって、ときに大阪を舞台にした喜劇は、そののりつっこみに乗り切れずに終わるケースがある。でも、本作はきっとそんな関東人も観終わったら“ほんま、おもろいな”という口調になっているかもしれない。というのも登場するのは心をくすぐる人物ばかり。浮気性だけど妻にはまったく頭が上がらないオヤジに、そんな夫に常に目を光らせながらも誰よりも逞しい大阪のおばちゃん丸出しのおふくろ、この両親の間でいつも板ばさみ状態で悩みの尽きない息子に、彼の煮え切らない態度にやきもきする妙に積極的な彼女、正体を隠して家族の中に入り込んできた父の浮気相手ら、町のどこかで見かけそうな人間臭い人々がドラマを紡ぎあげる。劇的な出来事は起こらないし、強烈なキャラクターは登場しない。でも、人の心に寄り添った豊かなドラマがこの作品には存在する。

小林監督は井筒和幸や根岸吉太郎、森崎東など、ひとクセある監督の助監督を務めてきたとのこと。そういわれると影響を感じる部分もある。ただ、それ以上に独自の視点と手腕をもった軽妙洒脱な作品に仕上がった印象だ。初監督作だけに正直もっと弾けたところもほしかったのは確か。でも、処女作としての完成度はかなり高い。堂々たる娯楽作と言い切れる。

(関連リンク)
『かぞくのひけつ』公式サイト
http://kazokunohiketsu.com/
※ユーロスペースにてレイトショー公開中

投稿者 mtoda : 21:45 | コメント (0) | トラックバック (0)

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