2007年12月26日

『ジャーマン+雨』 TEXT by 水上賢治

ここ数年、よく言われていることだが、日本映画界に次々と新たな才能を秘めた女性監督が誕生している。昨年は西川美和監督の『ゆれる』が様々な国内映画賞に輝き、今年は河瀬直美監督の『殯(もがり)の森』がカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得。荻上直子監督の『めがね』や、人気フォトグラファーの蜷川実花が初監督に挑んだ『さくらん』など話題作も多かった。本作を手がけた横浜聡子監督は、そんな女性監督の系譜に新たに加わりそうな逸材だ。

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(C)横浜プロ

青森出身の彼女は現在、29歳。この作品が初の劇場公開作となる新鋭だが、なかなか登場人物のキャラクター作りに才能を感じさせる。それほど、本作の主人公・林よし子という人物は強烈だ。資料には“ゴリラ顔、強引、わがまま、天涯孤独”と彼女について明記されているが、これだけではもちろんない。性格はいいところを見つけようとしてもみつからないほどひねくれているし、たちの悪い嘘をつく。人の失敗は見逃さないが、自分の失敗は許しまくり。こんな一方通行キャラは、男女問わず見たことがない。

よくよく眺めるとドイツ人の植木職人や女心が芽生えてしまった小学生、小さな男の子に手を出す変態オヤジなどなど、周りには強烈な人物がいっぱい。でも、よし子にはことごとく敵わない。小学生相手に本気モード全開で彼女がドッジボールに興じるシーン、頭が錯乱して汲み取り便所に飛び込む場面などで彼女が放つ存在感はすさまじいばかりで、いつの間にやら妙な愛情が芽生えてきて虜に。恐るべし驚愕のヒロインである。

ただ、奇天烈なキャラクター作りだけで終わっていないところがこの作品の優れたところ。現実離れした人物を主人公にしながら、実は現代を生きる人間が心に抱く社会への不満不平、口には余りだすことのない本音が語られた社会派ともいうべき内容に着地させている。今後、横浜監督がどんな物語を紡ぎあげていくのか楽しみに待ちたい。

(関連リンク)
『ジャーマン+雨』公式サイト
http://www.german-ame.net/
※ユーロスペースにてレイトショー公開中

投稿者 mtoda : 21:12 | コメント (0) | トラックバック (0)

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