2007年11月29日
『おそいひと』 TEXT by 水上賢治
大阪在住の脳性麻痺を持つ障害者、住田雅清を主人公に起用した本作は、2004年に発表された作品。同年に「東京フィルメックス」で上映されながらも、一種のタブーを扱った物語であるがゆえに封印されてきた経緯がある。そんな賛否両論の議論が飛び交った1作が、3年の時を経て、ようやく一般公開される運びとなった。

まず、内容から言うと、押さえきれない衝動に駆られるように重度の障害者が健常者に牙を剥き、次々と殺害していくというのはやはりショッキング。おそらく気分を害する人も数多くいることだろう。ただ、いたずらに障害者を扱った映画では決してない。なぜなら、この物語が示すのは、すべての人間が狂気を持っているということ。“障害者が次々と殺人を起こすなんてありえない”なんて常識、実はどこにもない。狂気的な行動に至る過程に実は健常者も障害者も線引きはないのだ。そのことをこの映画は示す。
手がけた柴田剛監督は「住田雅清という障害者を主人公に『タクシー・ドライバー』を作りたかった」と語っている。これは実に的確なコメント。この言葉が本作の内容を集約している。この手の題材はどうしても事前に毛嫌いされてしまうケースが多々あるが、この監督の意図を汲み取ってほしい。
その柴田監督だが、熊切和嘉や山下敦弘などを輩出している大阪芸術大学出身の新鋭。モノトーンでまとめられたヴィジュアル、考え抜かれた構図、滑らかなカメラワークなど、ストーリーテラーとしてだけでなく映像作家としても確かな資質を感じる。次回、どんな作品をぶつけてくるのか注目したい。
(関連リンク)
『おそいひと』公式サイト
http://osoihito.jp/
※12月1日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー
投稿者 tkurio : 23:08 | コメント (0) | トラックバック (1)



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