2007年11月06日
『愛の予感』 TEXT by 水上賢治
国際映画祭の常連として海外で高い認知度を誇る小林政広監督による本作は、ご存知のようにスイス・ロカルノ映画祭グランプリ受賞作品。同級生の少女により娘を殺害された父親と、その加害者の母親とが偶然にも出会い、心を寄せていく過程が描かれる。

(C)2007 MONKEY TOWN PRODUCTIONS
どうしても一見すると、犯罪被害者と加害者の愛という現在もしかしたら最もタブーな題材に目がいきがちなのは確か。だが、その賛否を呼びそうな物語以上に、小林監督の到達した映像表現に圧倒され、目を奪われる。
この映画は、冒頭と最後を除いては、セリフが一切ない。運命の悪戯で出会ってしまった犯罪被害者の父親と加害者の母親という両主人公の表情やしぐさ、行動のみが2人の関係を物語る。つまりのところ俳優の肉体と周囲の風景だけが武器。必要な情報がほしいときにタイミングよく出てくる現在の大半の映画とは、眞逆の演出法といっていい。
でも、作品と真摯に向き合った主演を務める小林監督自身と渡辺真起子の動作は、どんな計算しつくされた綿密なセリフよりも何よりも、その瞬間に沸き起こる互いの感情を雄弁に語り尽くす。言葉を排除してその場の状況と登場人物の感情を、これほど説得力をもって伝えきってしまう映像は、そうはお目にかかれない。映画の映像と表現がもつ魔力とパワーに改めて気づかされた。
こういってはご本人に失礼に当たるが、今回のロカルノ映画祭受賞での報道で初めて小林監督の存在を知った人も多いのではないだろうか。それほど海外に比べ、小林監督の評価は日本では低すぎる。活況が伝えられる日本映画界だが、こういった作品がまっとうに評価されてこそ、真の豊潤な時代に突入する気がする。
(関連リンク)
『愛の予感』公式サイト
http://ainoyokan.com/
※11月24日よりポレポレ東中野にてロードショー
投稿者 tkurio : 15:58 | コメント (0) | トラックバック (0)


コメント
コメントを送ってください