2007年10月02日

『Wiz/Out』園田新監督インタビュー

 誰もいない、ゴーストタウン化した渋谷。渋谷のみならず、東京、いや世界中に人間が存在していなかったら? 自分たちの仲間以外に…。映画『Wiz/Out』は、SF、不条理なサスペンス、青春群像劇、ラブストーリー…とさまざまな要素が入り組んだ形で同居している。ひと言でどんな映画である、とは言い切れないクセのある作品だ。若手監督・園田新に、作品の意図、撮影のアプローチ方法を聞いてみた。こちらもなかなかクセのある面白い青年であった。


wiz01.jpg


いまの日本、いまの自分たち、をとらえている日本映画が正直なかった


-ストーリー的・構成的に入り組んだもので、ジャンル的にもいろんな要素が盛り込まれている。監督の発想の根幹にあったのは?

「確かに見ようによっては、いろんな側面がある映画だと思います。ただ、自分としては軸はひとつなんですね。
ぼく自身常々思っていたことは、自分たちの世代の日本をとらえている映画が無い、ということ。若者や大学生たちの孤独感とか将来への不安…日本人ならではのモラトリアム、人生への焦燥感というものを誰もが抱えているにも関わらず、作品としてはそれ自体を特に取り上げられることがなかったように思います。
そして携帯やメールなどコミュニケーション方法自体は発達しているのに、コミュニケーション不全を起こしている状況。そういう僕が日ごろ感じている現在の日本への想いというか感覚を、自分なりの方法で映像化したかったんです」

-作品は、TVと現実がリンクするパートと、大学生のサークルのパート、という大まかにいうと2部構成の形をとられています。そのあたりの意図は?

「TVのパートは、自分なりのTVの解釈があって、いまの人たちってTVの中で流れている事件や事故を、まったく自分とは関係ないこととして見ていると思います。現実に起こっていることなのに虚構。じゃあ、その曖昧な関係にある現実と虚構とが混在したときの恐怖というのを描いてみようと。
もうひとつのパートでは、若者たちの内面心理について。大学のサークル仲間たちが、普段すごく仲がいいんだけど、彼らも他人に見せている部分と、他人に見せていない部分があって、本人もどっちが本当の自分なのかがわからなくなっている。そうギリギリの心理状態で、世界から人が突然、消えてしまうという極限状態に追い込まれたとき、彼らはどういう行動に出るのか。関係性は継続できるのか。
曖昧な環境、曖昧な精神状態、曖昧な関係性。それがいまの日本で、いまのぼくたちでもあるんですよね」

-そういう感覚的なものをいろんな要素を組み合わせながらまとめていくのは大変だったのでは?

「どうなんでしょう。僕は脚本を書くときに、とくにハコ割りとか書かないんですよ。なんとなく映像があって、それをもとにいろんなアイデアを凝縮させながら、無心で書いていく。「Wiz/Out」は3日間で一気に書きあげました。第一稿は空白の多い、擬音語とか入っている、そんな感じのですけど、大まかな構成はそこで大体固まっていました」

-その最初にあった、なんとなくの映像というは

「自分が渋谷を歩いていたときに、人がいっぱいいるのに、誰もいないような感覚に陥ったときがあって。みんないるようで誰ともつながっていない。それは主人公の一哉の感覚として、劇中で再現しています」

-それが無人の渋谷という映像としても再現されているわけですね。あれはかなり大変だったでしょう

「『Wiz/Out』は自主制作作品なので、当然たくさんの制限があるんですよ。実際、撮影中は自分の仕事もやっていたし、すごく忙しい時期でしたから。それでも、あの“無人の渋谷”というのは映像として、絶対必要なものでした。こじんまりとしたくなかったんですよ。自主制作でもスケール感では負けたくないという。なので、もう必死です。気合ですね(笑)。車とかも止めましたから。止めるときは死んでもいいかなって気持ちで止めます。もう、やるしかねぇだろう、ぐらいの気持ち。撮影は全部そういう気持ちで取り組んでいたので、逆に研ぎ澄まされていって、効率が良かった。今となっては笑い話ですけど、スタッフが(寝不足で)バタバタと倒れていく、そんな現場でしたけど」

俳優たちの化学反応が欲しかったし、ぼくもそれに反応する

-俳優陣にも少し変わったアプローチで、作品に取り組んでもらったと聞きましたが

「出演する俳優たちには、撮影3ヵ月前から具体的な方法で役作りをしてもらいました。映画に登場する大学のサークル“FLAPS”のメンバーとして、SNSに参加したり、ブログを書いてもらったり、役柄の関係性で実際に会ってもらっていたりしていました」

-そのあたりの意図は?

「ぼくとしては役を演じてもらいたいのではなく、役としてそこに居てもらいたかったんです。こういうシチュエーションになったらアナタならどうする? そういう状況下でのリアルな反応を切り取りたかったんですよ。こういう役です、ハイやってみてください、ではなく、役者自身にある程度の幅を持たせて、その化学反応を見たかった」

-役者にそのあたりを委ねる不安はなかったんですか?

「それはもう役者を信じるしかないわけで。オーディションのときに、この人ならできると信じた人を選んだわけですから。オーディションでは、別に演技してもらったりしたわけではないんですね。脚本について話をしたり、役者としての今後を聞いたりして、自分と同調する人を選んだつもりです。なんていうんですかね、作品に対する、役(者)に対する、本気度を見た、という感じなんですかね」

-3ヵ月間の役づくりのなかで、役者間でモチベーション面などのバラつきは?

「それが不思議となかった。役者のなかで他の役のブログとか読んで、自分も負けられない、というせめぎあいになっていたようです。撮影本番では、NGも少なかったですし、自分の思っていた方向にはもっていけたかなと」

-そういう俳優陣の化学反応に対し、監督自身の化学反応は起きなかったんですか?

「いや、起きましたよ。最初の脚本と最後のとでは、変わっていますから。もちろん、軸の部分はブレるわけではないですけど、役者がこういう心境になっていったという部分はやはり掬い取って反映していかないと、リアルな感情の動きとか撮れないですよね」

-このアプローチ方法は今後も続けていきますか?

「どうなんでしょう? 正直、今回だから、今だから、取れた選択肢だとも思っています。自分の年齢のこと、同年代の役者たち、それぞれの想いや気持ち、いろんなものがシンクロしないと出来ないことなのかなとも」

-今後撮っていきたい作品を教えてください

「そうですね、『Wiz/Out』は自分としては見る人を想定したエンターテイメント作品ではあるんですね。だから、次はもっと感覚的なものを作っていきたいです。映像・音楽・感情とかがもっと凝縮された、見る人が“なんだコレは?”と圧倒されるぐらいのもの。そのためには全ての面でのレベルアップが必要だと思っています。自分の作家性をもっともっと突き詰めていきたいですね」

main2.jpg
(C)2006 WizOut Project LLP
※10月6日より渋谷ユーロスペースにてレイトショー

PROFILE
園田新/SHIN SONODA
1978年1月19日生まれ。立教大学国際比較法学科卒。大学進学後映画制作に興味を持ち1999年、ニューヨークに留学、映画制作を学ぶ。初監督作品「PRIVATE EYES」がニューヨークで話題となり映画関係者からの推薦を受け国際映画祭に招待される。続く中篇作品「LOVE SQUARE」は多数の国際映画祭にて高い評価を得る。「Wiz/Out」が長編処女作となる。

<関連サイト>
『Wiz/Out』公式サイト
http://www.focus-infinity.com/wizout/

園田新 Official Blog 「Wiz/Out Rules」
http://blog.livedoor.jp/shinsono/

投稿者 tkurio : 14:22 | コメント (0) | トラックバック (0)

このエントリーのトラックバックURL

http://channel.slowtrain.org/mt/mt-tb.cgi/152

コメント

コメントを送ってください




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)