2007年10月15日

『犯人に告ぐ』 TEXT by 水上賢治

最近、久しく見ごたえのある邦画のミステリーやサスペンス劇にお目にかかれていない。ストーリーはよく練りこまれている。でも、その周到な物語の上辺だけを撫でている感じ。肝心の登場人物にまったく血が通っていない。気づけばそんな作品ばかりが並ぶ。その中で、本作では久々にずっしりとした重厚感に心が満たされた。

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(C)2007「犯人に告ぐ」製作委員会

何よりも光ったのは瀧本智行監督の人間描出力。彼のデビュー作『樹の海』は、セリフに頼るのではなく、俳優たちのしぐさやちょっとした動きで、富士の樹海に足を踏み入れた人間たちのさまよえる魂を映し出した力作だった。その描写が今回は、さらに力強く凄みを増した印象。『クローズド・ノート』も映画化された、今最も注目を浴びる作家・雫井脩介のひねりの効いた原作を手にしながらも、監督は物語の仕掛けや意外性に終始することはない。むしろストーリーを紡ぐ人間たちの感情に焦点を当てていく。

その人物描写は、ちょっとした端役もぞんざいにしない。結果、主人公の刑事・巻島をはじめとする劇場型捜査劇に様々な角度で関わる人間たちの、そのときに抱く、あらゆる感情がヒリヒリするような感覚でこちらの肌に伝わってくる。この丹念な演出力に魅せられた。

(関連リンク)
『犯人に告ぐ』公式サイト
http://www.hannin.jp/
※10月27日より全国ロードショー

投稿者 tkurio : 23:25 | コメント (0) | トラックバック (0)

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