2007年09月10日
『壁男』 TEXT by 水上賢治
カルト的人気を得ている漫画家、諸星大二郎の原作をもとにした本作は、壁の中に存在して人々を眺めているという、得体の知れない存在“壁男”なる都市伝説が題材。ここから大概の人がホラーを想定することだろう。だが、本作はそのジャンルにとどまらない魅力を放つ。

(C)「壁男」製作委員会
そもそも恐怖話となると日本では夏が相場に決まっている。でも、本作は雪がちらつく真冬の札幌が舞台。風情に欠けるといわれればそれまでだが、これが意外や意外、どんより曇った灰色の空は寒々しく、閉塞感が漂い、都市伝説が思いのほかよく似合う。しかもホラーの装丁を施しながら進展する物語が実際に提示しているのは、貧困する地方経済や高齢化社会の歪み、視聴率に走るマスコミの在り方など、現在の日本が抱える闇。骨太の社会派ドラマと言い切りたいほどメッセージ性を持つ。これは札幌在住で、同地を拠点に活動を展開する早川渉監督の制作スタイルによるところが大きい。彼のローカルならではの視点が、既存の都市伝説ものとはまったく違うミステリーを作り上げた。
もうひとつ早川監督の手腕で見逃せないのが、壁男に魅了されていく主人公を演じる堺雅人の演出。堺の専売特許でもある“微笑みの演技”を、ここまで不気味に使ったのは彼が初めてかもしれない。
(関連リンク)
『壁男』公式サイト
http://www.kabe-otoko.com/
※9月15日からテアトル新宿にてレイトショー
投稿者 tkurio : 23:27 | コメント (0) | トラックバック (0)


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