2007年07月23日

『馬頭琴夜想曲』 TEXT by kenji mizukami

美術監督作品はすでに200本を突破。日本映画界を代表する美術の巨匠、木村威夫の通算3本目の監督作品になる。1941年から映画界でキャリアをスタートさせている巨匠の監督デビューは80歳を超えてから。でも、その映画に対する情熱や映画の可能性を模索する意欲には正直なところ驚く。“盛況”が叫ばれる日本映画界だが、ある程度よくできた脚本をそつなく映像に置き換えて納得してしまう、作家性のない監督が残念ながら多い。

batoukin.jpg
(C)AIRPLANE LABEL

それに対し、89歳を迎えた木村監督のチャレンジ精神の旺盛さといったらない。原爆をひとつのキーに、戦争に対する悲しみと鎮魂のドラマが筋立ててあるものの、これはあってないようなもの。定石をあえて崩した構図のシノプシスは、あくまで受け手の感性に委ねられる。それゆえ、腑に落ちる人もいれば理解不能と思う者もいることだろう。

でも、この挑発的な試みは少なくとも、何か新たなものを生み出そうとしていることは確か。これこそクリエイター魂にほかならない。作品の向こう側に、本来ならばこれから打って出ようとする若手作家たちが持たねばならない、既存に対する反発心や模範を壊そうとする抵抗の意識を、この老齢の巨匠の中に見た。

(関連リンク)
『馬頭琴夜想曲』公式サイト
http://www.airplanelabel.com/batokin/

投稿者 hoga01 : 22:54 | コメント (0) | トラックバック (0)

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