2007年07月13日

『大日本人』 TEXT by Hideyuki Utsunomiya

松本人志監督自身がどう語ろうと、問題作『大日本人』は、人気芸人が手がけたコメディである前に、非常に独創的かつ野心的なSF不条理ドラマである。

大日本人

変身巨大ヒーローものをリアリズムで描くというアプローチは、『ウルトラマン』世代なら誰もが一度は夢想したものだと思うが、ここまでそれを徹底してやってのけた映像作品は過去なかったのではないか。

冒頭、ヒーローとしての収入を“具体的な額”まで語ってしまう大日本人、変身することを“焼く”と業界用語で表現する大日本人、怪獣を派手な光線技や超能力ではなく“鉄パイプ”で殴打して倒す大日本人、マスコミや大衆から賞賛の代わりに誹謗中傷を受けまくる大日本人、勝てそうもない敵からは一目散に逃げ出す大日本人。フェイク・ドキュメンタリーの手法が醸し出す、まったりとしたリアルさも手伝って、異様な作品世界にズルズルと引きずりこまれるこの快感は一体なんだろう。

巨大なパンツに包まれたまま感電の苦痛に雄たけびをあげる変身シーンや、先々代の大日本人がレトロな町並みに溶け込む古いニュース・フィルムなど、頭に焼き付いて離れない強烈なイメージの数々! 鑑賞した新宿ミラノ座は、実に実にシンと静まり返っていたが、僕はひとりで興奮していた。それだけに、ラストの大・ちゃぶ台返しは(松本監督の気持ちは分かる気もするが)とっても残念。世界初の超リアル主義ヒーロー映画を、本当は最後まできちんと見届けたかった。それにしても、松本監督、『VISUALBUM』での『巨人殺人』や『一人ごっつ』の大仏師匠など、“巨大なるもの”につい執着してしまうのはなぜなんでしょう?

(関連リンク)
「大日本人」公式サイト
http://www.dainipponjin.com/

投稿者 slowtrain : 21:08 | コメント (0) | トラックバック (0)

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