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ラジオから流れないインディーズ・バンド指南

 Oiッス。9年ほど前にHi−STANDARD、コーク・ヘッド・ヒップスターズらの活躍で一気に市民権を得て来たインディーズという音楽の世界。各FM局からも連日インディーズのバンドの歌が流れてるのはご存知の通り。モンゴル800がアルバムを300万枚売ったとか、HYがオリコン初登場1位なんて話題がニュースで取り上げられたり。が、しかーし! 彼らだけがインディーズじゃない! もっと知って欲しいバンドが、そりゃもう沢山いるんですよ、ホントに。微力ながら全力投球でいきますので、お付き合いのほどよろしくです。

一番最初に紹介したいインディーズ・バンドがMORGUE SIDE CINEMA−モルグ サイド シネマ−(以下:MSC)。我ながら、このコラムの一発目を飾るにふさわしいバンドと確信しています。そのワケは…ま、とにかく読んでみてください。




匂い立つ男気と唯一無二の存在感の前に、ジャンルの説明は無用

 97年に大阪で結成されたMSC。メロディックやらミクスチャー、ニューヨーク・ハードコアなど、とかく音楽シーンではさまざまな流行が猫の目のようにコロコロ変わる。だけどそれに流されずヘヴィなギター、下腹に響くベース、余計なものを削ぎ落した的確なドラム、そこにナチュラル・ヴィヴラートなヴォーカルが乗る変わらぬスタイルで彼らは活動を続けている。でも彼らをジャンルで括るのは難しい。「パンクとはスタイルではなく精神」という故ジョー・ストラマーの教えに基づくならきっと"パンク"となる。"オルタナティヴ"という言葉がまだ生きているのなら、"唯一無二"という意味で使いたくもなる。こんなに音楽のジャンルが細分化されているのに、MSCにピッタリ当てハマる言葉がないっ! 男・汗・黒・悪・30代・・・コレ、MSCを説明するキーワード。YAHOO!で検索しても出てきませんけどね。だけど実はこのキーワードが大事。ほら、それぞれの単語が意味深で、なんとなく音に対する想像力を掻き立てられません?

 ボクは結構昔からMSCのライブを観てる。MSCのライブを初めて観た時の衝撃がどれほどだったかと言うと、ずっと休止していた自分のバンドを復活させずにはいられなかったほど。 それだけ「俺もやりてぇー!」と思わせるインパクトだった。場所は大阪のライブハウス、ベアーズ。客は10人いたか、いなかったか。それ以来MSCを(勝手に?)師と仰ぎ、細々とバンド活動をしていたボクのもとにある日、吉報が。2000年のことだ。なんとギターの佐田らを発起人にオムニバスCDが発売! もちろんMSCも収録! 家でも簡単にあの衝撃が味わえる! うっひょー!! CDタイトルは「EMPTY」。DEATH SURF2000やGAMEなど、当時関西で活躍していた(もしくは現在も第一線で活動をしている)匆々たるバンドが顔を揃えた超豪華盤だ。「EMPTY」という架空の映画のサントラに、それぞれのバンドが曲を提供する、というコンセプト(なんとヴォーカルの松岡が考えたストーリーまで掲載されている。ちなみにB級ホラー!)のこのオムニバスは、自分たちのやりたいことを"ノリ"で形にする、まさにインディーズの匂いが薫り立つ1枚。


佐田:あれが出た経緯はね、僕が「EMPTY」という服屋をやってまして。その周りにいたバンドをやっている人たちが集まって「何か作ろうか」という話になって。ちょうど店も2周年やったし。まぁ、出た言うても、バンドを取り巻く状況は何も変わらんかったけど(笑)。

寺尾:そのころはベアーズでガンガンライブをやってた頃で・・・。それで徐々にファン ダンゴ(老舗のライブハウス)に出たりウォーター(同)のイベントに呼ばれて出たり。

佐田:(変化し出したのは)「NEW AGE」(オムニバスCD、00年発売)が出た頃からかな。一緒に参加したハードコアのバンドに対バンで呼ばれたり、レコ発があったり・・・違う人脈が広がっていった感じでおもしろかった。

 あぁ、「NEW AGE」・・・。今は無き、男泣きOiバンド、ネイチャーコールズミー(ホンットにカッコ良かった。ボクも対バンとかやれて幸せだったな)主催のレーベル“漢之華路”が放った珠玉の1枚。当時の関西インディーズ・シーンをそのままパッケージしたようなバンドのラインナップはセンス抜群でハズレなし。ネイチャーコールズミー、MSCはもちろん、ジャンルの垣根を超えた“関西インディーズ・バンド見本市”とも言える良盤だ。もちろん、いまだにマイ・ヘビーローテーション。

佐田:ニューメタルっていうか、エッジ・オブ・スピリット(関西のバンド)とか。絶対にあのオムニバスがなかったら一緒にやることなんてなかったやろうね。実際に「NEW AGE」聴いてMSC知ったってバンドがめちゃくちゃ多くて。若いパンクスの子らが知ってくれて、バンド間の交流も、MSCの認知度も広がったって感じ。そういえば、MSCのコピーバンドもおったよな。

寺尾:コピーやってくれてるねんけど、なんかギターがメタルみたいなソロを勝手に入れて・・・(佐田が)「そんな風に聴こえるんかなぁ」って悩んでたやん。

佐田:「コピーバンドの方がカッコいい」って言われたり。こんなん、載せんといてや(笑)。

 すいません、載せちゃいました・・・。確かに、「NEW AGE」発売の頃から、ライブがタイトかつソリッドに、より極悪になったように思う。メンバーはバンドのロゴ入りの黒っぽいポロシャツとかを着て、全体的に“黒”の雰囲気を醸し出して。ほとんどMCもなく、淡々と展開されていくスタイルは昔から変わらずに。いろんなジャンルのバンドと対バンしているだけあって客層は、短パンにでかいバッシュのキッズ、スケーター、スキンズ、パンクスとバラバラ。けど、ひとたびパフォーマンスが始まればすべてのオーディエンスは握り拳を突き上げ大合唱。まさに臨界点に達した緊張と興奮が弾ける瞬間! それぞれ異なるジャンルの音楽を聞いていたであろうオーディエンスがMSCでひとつに。ライブ時のオーデイエンスの一体感はすごいッス。


すべての基準は“おもろい”かどうか

 MSCがインタビュー中もよく口にしたのは「俺らがおもろいと思うかどうか」。例えば昔、松岡はダース・ベーダーのお面を被ったままマイクを握っていた。ついでに、お面の口のところを切って、タバコを吸っていた。理由は「その時はそれがおもろいと思ったから」。さらにはメンバーが黒の衣装でばっちり合わせてるのにドラムの滝野(インタビューには不在)だけはなんとパン一。分かりますか、パン一。パンツ一丁の略です。もちろんその理由は「それがおもろいと思うから」。

佐田:例えば、演奏中ずっとAMラジオ流しとくのおもしろくない? 演奏と演奏の間に、リアルタイムのラジオが流れてるねん。番組は何か分かれへんで。漫談か音楽番組か。けど野球やったらあかんなぁ。野球好きと思われたら嫌やから。

 なんかちょっと、あれ?なんて思われました? 黒い雰囲気でソリッドでタイトなライブで・・・とかって言うと、ミッシェル・ガン・エレファントとかルースターズのようなクールなバンドの印象を与えてしまってたかも。

松岡:まぁ、ドラムがパンツ一丁でやってるようなバンドやから、基本なにやってもええやろ。またそれがおもろいと思ったらダース・ベーダーもかぶるかもしれんし。

 この唯我独尊! の感覚。 これもMSCの魅力なんです。 なにか突拍子もないことを考え実行に移そうとする。身内ノリであろうがおかまいなしに! オーディエンスに何か起こるんじゃないか? そう思わせるスリリングなステージ。メンバー間で“同じ時期に同じことをおもしろいと思える”こと。一般的にはこのフィーリングの一致が、長くバンドを続ける秘訣だと言われてるけど、MSCの場合はもっとナチュラルなんです。

佐田:みんな誰一人として同じところに向かってない。バラバラ。人間性もバラバラ(笑)。

尾:何でバンドとして一致してるんやろ?

佐田:ちょっと喋ったらケンカ腰なるからなぁ。そういえば、タッキンも最初パンツ一丁なるのビビってたらしいで。「前のバンドではパンツ一枚でやってたけど、このバンドでやってええんか?」って。

 まるで春団治じゃないスか。「あんさん、やりなはれ。思う存分やりなはれ」。それがきっちり芸(=ライブ)の肥し(=魅力)になってるし! スゲェ! それで歌ってることは「人間の弱さや極限状態」(松岡)って、やっぱただ者じゃない。

佐田:俺は、まっちゃん(松岡)の詞がリフに乗ったときに、バッと情景が広がるというか、そういうのんが好きやし大切やと思う。歌詞カードは付けてへんけど、別にみんなに訴えるような革命的なことを歌ってるわけじゃないし。英語でも日本語でも、そのフレーズでグッとくるかどうかやから。

松岡:ええこと言うなぁ。さすが曲作りに関して統轄してるだけあるな。

佐田:ちょっと待って、統轄してるって聞こえはええけど、ボツった曲だけでアルバム1枚作れるで(笑)。別に俺だけじゃなくって寺尾マンが作ってくる曲もあるし、タッキンが作ってきたやつもあるし。それにまっちゃんがメロディ乗せてる感じやな。

寺尾:コード進行を誰かがスタジオにもってきて、みんなが“ガッ”とならへんかったら、うやむやのうちにボツになるねん。

佐田:ワンマンのバンドやないから。ギターの弾き方、ベースの弾き方を誰かが指示する、みたいなそれとは違うから。できたもんをみんなで「どうしよか?」って。  曲の展開もどっちいくか分からへん。もちろん制約はあるよ。ポップな曲を家で弾いてて気持ちええなってなっても、スタジオには持っていけへん、みたいな。けど、ひとつ言えるんは、ギターポップみたいな歌でも、まっちゃんが歌ったら、それじゃなくなるとは思う。

 バンドの“顔”とも言える歌い手の声を形容するときに、これほどの褒め言葉ってないよなぁ・・・。やっぱお互いが才能とか個性を認めて信頼してないと、なかなか言える言葉じゃないね。けど、「ワンマンのバンドやない」からこそ、メンバーそれぞれが審査員。しかも、よくいるでしょ? オーデイション番組で一番ケツに座ってる、辛口キャラの奴。メンバー全員がアレですよ。

松岡:なにより、まず自分以外の3人を納得させるのが大変や。それは他のメンバーも一緒ちゃう? 匡(佐田)とかもスタジオに新曲もってくるのとか怖いんちゃう? 俺も、歌詞一生懸命書いて、ボーカルラインつけても「こいつらどう思ってるんやろ」って。一番最初に歌うとき、声小さいもん。

佐田:そうやな。だから自分と他の3人が納得しておもろいって思ったら、別にライブでウケへんかってもかめへんもん。そやからほんまにお通夜みたいな時もあるし。

岡:まぁ、やることやってるやん。ええんちゃう。

寺尾:静かでもええねん。知らんバンドでいきなり客が「うわー」ってなる方がおかしいやん。まぁ、客が観に来やすい環境を作るのは大切やとは思うけど。




売れ線ならぬ“オレ線”、その信念こそがMSCの魅力!

 オムニバス2枚、シングル2枚をインディーズレーベルからリリースし、2003年に初のミニアルバム「DOMESTIC PREDATOR」をロフトレコード傘下の“顎髭(あごひげ)”から発売したMSC。なんといっても“メジャー”! すごいことですよ。となるとよほど大きな流れがあったように思えるでしょ? けど、MSCはとことんマイペース。発売に至った経緯は「たまたまテープ送ったら向こうから『出しませんか?』って連絡来た」(佐田)から。「メジャー志向は?」という質問に、佐田は軽く笑って答えてくれた。

佐田:メジャー志向があるんやったら、20歳くらいの時にとっくに顔を整形してるで(笑)。もっと音も凝ってるやろうし、オーディションとか受けまくってるって。曲かて売れ線にしてるやろうしなぁ。メジャー志向ってそういうことやで。ぜんぜん俺らがやってることとちゃうやん。「DOMESTIC〜」はレコード屋のメジャーのコーナーに置いてあってん。あれ、嫌やったわ。俺らインディーズやのに。しかも森繁久弥の横やったからなぁ(笑)。

 この瞬間、モトリー・クルーのドラマー、トミー・リー(そういえば、こいつもドラム叩くときパン一やったなぁ・・・)の言葉を思い出した。「ロックって、ギターとベースとマーシャルがあれば後はもうGOするだけ」。ひとたびステージに立つと、カッコなんて付ける間もなく体、もしくは脳が“ロック”に向かって行く。そこには“メジャー”や“インディーズ”の垣根、ましてや計算とかは存在しない。そりゃそうでしょ? アドレナリンがチューチュー出てる頭で何を計算できますかって(トミー・リー、良いこと言うね)。

 すり減ったコンバースで一歩一歩着実に前進、大阪だけじゃなく東京や福岡にも活動の幅を広げるMSC。間違いなくロックに向かってGOしてる。それってもう、生き様。「自分からパンクを見つけようとしても見つからない。パンクがお前を見つけてくれるんだ」とはランシドのフロントマン、ラーズの言葉。計算もなしに、自分たちの心のままに音を、言葉を放ち続け、ジャンルやオーディエンスのすべてを惹きつけて巻き込み、ますます黒い光を放っていくMSCって“パンクに、ロックに見つけられた”スゲェ バンドだと思う。マジで。




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