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プロローグ「見ることよりほかに」
第1回 「平壌ドボン」
第2回 「パレスチナの青い空」
第3回 「哀しき熱帯」
第4回 「愛すべきならず者たち」
第5回 「平壌でボッタクリ-崩壊か開放か」
特別編 「水汲みロイちゃん〜アフガニスタン・カブール陥落に思う〜」
第7回 「誰も俺たちを撃たない」
第8回 「NGOは誰のため?」
第9回 「アフガンは笑う」
第10回 「私の中のテロリスト」
番外編 「パレスチナから帰ってきました」
第11回 「ローマの休日」
第12回 「クナシリ漂流」
第13回 「世界でいちばん憂鬱な場所」




後藤さん呼んだつもりないから。
あんた何しに来たの?


Ж で、今回はしっかりと言われてしまった。「後藤さん呼んだつもりないから。取材させる気ないから。今年になってからマスコミ全部断ってるから。あんた何しに来たの?」
俺の場合2000年、2001年と来ていて、それなりに取材報告テレビでやってるし、相手は俺の職業知っているから初心な観光客は装えないし、NGOにくっ付いてきて何とか取材しようとしているのがミエミエだし、ごまかせない。
「だって何取材させてもわが国の攻撃に使うじゃない」
「だって拉致したじゃない」
「それ出すならわが国が戦前に受けた強制連行や従軍慰安婦や、そういった戦争犯罪はどうなのよ」
「すいません」
「だからお互いの過去の過ちは過ちで認めて、平壌宣言したんでしょ? それを何よ、自分たちだけが被害者のような顔してさ」
「でも、まだ拉致の被害者の子供たちが帰れないし、日本ではそれが解決しないと」
「一時帰国だって行って5人を帰さないという約束違反したのはどっちよ?」
「いやだから、もう争いはやめてね、お互いのことを知り合うことから始めてさ、ほらKEDOの原油ストップしたじゃない、この影響がどう市民を苦しめているかとかさ、食料不足って言うけどどれぐらいかちゃんと報道して、人道的援助に繋げるとかさ、つまり前向きな…」
「いやいいです、何も報道してくれなくて、我が共和国はもう自分たちで意地でも生きるんですから、同情いらないから、NPT脱退だから」
「だからこの膠着状態を打開するためにもね、蓮池さんや地村さんのお子さんたちが元気だよっていう映像だけでも日本に届けてさ」
「それってあんたの魂胆そのものじゃない。そっちの事情とこっちの事情は違うのよ、拉致どころじゃないのよ今うちは、アメリカが攻めてくるかもしれないんだよ、悪の枢軸って言われてんのよ、イラクの次じゃなくて同時にやれるってアメリカは吠えてるのよ、人道考えてる暇ないのよ」

 いかに俺がおべっかを使っても、聞き入れちゃくれない。
NGOも連日の打ち合わせで、ホテルと相手の事務所を行ったり来たり。
ということは車ばかり乗っているわけで、俺はすっかり孤独で、「平壌からの車窓」を何度も同じ場所ばっかし撮影していた。

 それでもびっくりすることはあった。氷点下というのに、人が夏より多いのだ。寒いのに屋台も出ているし、いつ降ったのか凍った雪が残る道では子供たちが元気にスケートしているし、なんだか車も多くなっている。工事も多くてやたら活気付いている。なんだこれは。車を降りて聞きたい。
「平壌宣言をどう思いますか?」
「拉致問題知ってますか?」
「日本をどう思いますか?」
100個ぐらいの質問を頭の中にめぐらせながら、車の窓にへばりつく『見ていることしか出来ない日本人とんまジャーナリスト』。
こんなに『見ることよりほかに』を感じたこともなかった。
滞在はわずかに5日間。気持ちはあせる。向こうは意に介さず。

「あのぉ、マフラー買いたいんですけど」
「じゃあ行きましょう」
「(シメタ、車を降りられる)」
で、着くと別なホテルのお土産やコーナー。ここって外国人しか来ないじゃん。
「こんなんじゃなくて、こっちの人がしてる普通のヤツが欲しい」って、お前はおねだりする餓鬼か?
「じゃあ、街のデパートに行きましょう」
「やった!」
で、デパートに入る。遠慮しつつカメラを回すと、売り場の人がやってきてなにやらガイドにささやく。
「後藤さん、もうやめましょうよ。みんな嫌がってるから」
「そうですか、辞めます」

 ここで辞めとかなくては、本来の目的が達成できない。我慢だ。
外に出ると、目の前の建物に行列。
「あれなんすか?」
「あそこは市民が行く浴場やサウナがある建物です」
「あ、俺サウナはいりてー」
「ああホテルにありますよ、帰りますか?」
「(いやそうじゃなくて)」

 そのサウナのビルの前にはなんとアイスクリームの屋台、人がいっぱい。
撮りてー。
「後藤さん行きますよ」
「あの、その」
「あれ、後藤さんマフラー買ってないじゃん」
「ええと、もういいです」ってどじな奴。

 てな感じが毎日続いた。
何とかしなくちゃ。というわけで夜の食事。ホテルはつまらないということで、毎晩外のレストランで。
飲むのは『平壌焼酎』。これをガンガンいく。旧ソ連でも体験したが、何かにつけて乾杯し、飲み上げる。その間に日本のマスコミの批判、日本の政府への批判、朝鮮民族の歴史、今北朝鮮が置かれている危機的状況、話す話す。延々と話す。
「分かりました、分かりましたから取材をもう少し」
「まあ、考えておきましょう。今はそのこと忘れて飲みましょう」
てなわけで毎朝二日酔い。
こんな時は、平壌の冷たい風も頭はっきりさせてくれていいか。

 と、突然ですが時間切れ。今回はここまでです。
これを書いるのが1月22日の深夜。明日からアルゼンチンです。
中途半端でごめんなさい。続きは帰国後、って一ヵ月後になるかもしれません。
(一応続く)




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