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プロローグ「見ることよりほかに」
第1回 「平壌ドボン」
第2回 「パレスチナの青い空」
第3回 「哀しき熱帯」
第4回 「愛すべきならず者たち」
第5回 「平壌でボッタクリ-崩壊か開放か」






2001.11.26 UPDATE



後藤和夫
text by Kazuo Goto




※友人たちに送っているCOOL HANDS通信を緊急メッセージとして転載します(後藤和夫)

「タリバンのほうがよかった」と言った少年がいた
その少年は、大人たちから叱られた


Ж アフガニスタン、カブール陥落。タリバンが去って喜ぶ民衆の姿が報道された。町に派手な女優のポスターが貼られ、子供たちは凧揚げをし、ラジオを聴く人や、映画館が再開される様子。嬉しそうに髭を剃る人、ブルカを脱ぎ顔を見せる女性。報道の多くはタリバン圧政下から開放された市民を「自由」を取り戻したと、浮かれた調子で伝えた。「治安良好、物資も豊富」。「自由と活気」。
しかし私はそれを奇異な感じで受け止めた。
「なんだ、タリバンの圧政といってもたいしたことなかったのかな?」
アメリカの、ビンラディン=アルカイダ主犯説からいつの間にか、まるでテロの首謀者のように敵視され、その強圧的な政権ぶりが伝えられてきたタリバンだが、人々はその政権が敗走すると、かくも早くラジオや女優のポスターを出してくる。音楽テープ屋が開き、果物や野菜が市場に並ぶ。
「なんだ、ちょっとの間我慢してたんじゃないか、隠し持っている自由はあったんじゃないか」
第一、「物資も豊富」って、カブールが陥落してすぐさま輸入されたわけじゃあるまいし、それまででもあったんじゃないか。アメリカの宣戦布告で戦闘下にあり、ただ商店や市場が開けなかっただけじゃないのか。「治安良好」って、アメリカや北部同盟が攻め込む前もそれなりに治安良好だったんじゃないか。

 確かにタリバン政権下では「自由」はなかっただろう。人々は、さまざまなイスラム原理主義的な規則に縛られていただろう。
しかし、96年にタリバンが政権をとってから、アフガンの各都市の治安は、それまでの内戦に比べずっと良くなっていたはずだし、少なくとも、各派が交互に来て略奪や殺害を繰り返すということはなくなっていたのじゃないか。
タリバン政権下の人々の悲惨は、もちろんその強圧的な政策にもあったが、何より国連の制裁と3年前から続いていた大旱魃のせいではなかったか。かつてカンボジアでポル・ポト政権が自国民を大虐殺したというようなことはなかったはずだ。
この政権下でも、多くのNGOや国連機関によって、少しずつ89年のソ連撤退後内戦に明け暮れたアフガンの人々の復興は進められていたのではないか。
少なくともタリバンを追い出すために、アメリカに激しい空爆をしてほしいとは誰も思っていなかったに違いない。
それが、アメリカの仕掛けた戦争で、北部同盟が援助を受け、リベンジを果たした。そしてカブールを陥落させた。これが、そんなに喜ぶべき「解放」だろうか。復興がより進むとでも言うのだろうか。

 外国メディアが民衆にインタビューをする。みんな口々にタリバンがいなくなったことを喜ぶ。中に「タリバンのほうがよかった」と言った少年がいた。その少年は、大人たちから叱られた。北部同盟に支配されたらタリバンの悪口を言う、タリバンに支配されたら北部同盟の悪口を言う。これはおよそ政治的ではない一般民衆の知恵だ。どちらでもいい、被害さえ受けなければ、もうこれ以上痛めつけられたくないのだ。少年の言葉は真実だったかもしれない。しかし民衆の願いというものは、支配者からなるべく暴力を受けたくない、ただそれだけなのだ。それが長い戦乱に苦しんだ人間たちの本心なのだ。
かくて少年の言葉は圧殺される。
しかしその言葉こそ重い。果たして民衆の平和に暮らしたいという願いはかなうのだろうか。

 否。カブール陥落は、新たなる内戦の始まりであって、私はむしろ暗澹たる気持ちでニュースを眺めていた。
予想通り、北部同盟の各派はそれぞれの主張を始め、支配地域をそれぞれのやり方で征服し、他派と対立を始めた。そこに向かおうとした報道人は山賊と化した武装兵士によって殺害・略奪された。今後各地域で、タリバン寄りとされた人々への弾圧が始まるだろうし、各派は自分たちに都合のいい制度で人々の生活を管理圧迫するだろう。アフガンは分断し、われこそがこの国を治めるのだと、再び人々を恐怖と混乱の日々に陥れるだろう。
逃げのびたタリバンは、逆襲の機会を狙うだろう。それはアフガン国内だけとは限らない。
この責任は誰が取るのか。

 今私は、喜ぶ民衆に混じって現地報告していたフリーのジャーナリストたちの安否が気になる。かつてアメリカはソ連侵攻に対してタリバンを支援した。そして今北部同盟を支援し、タリバンを追い詰めた。政治のゲームが、泥沼の内戦を再発させようとしている。
おそらく多くの報道人が今後被害に会う。
そして、普通に生活したい多くの市民の新たな悲劇が始まる。



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