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プロローグ「見ることよりほかに」
第1回 「平壌ドボン」
第2回 「パレスチナの青い空」
第3回 「哀しき熱帯」
第4回 「愛すべきならず者たち」









平壌でカラオケ
ここは歌舞伎町以上だ!

 
 
Ж 南浦上陸後、映画村や万景台少年宮殿などお決まりのコースを回った。
まだいる。しつこくカメラを回している。もうあれは平壌テレビではない。明らかに我々を狙っている。公安当局か? 何でだ!
 
 で、羊角島ホテルに投宿。北のカメラマンはまだ回している。
ここは平壌ではかなり立派なホテル。去年地下のカジノを探訪したホテルだ。今年はカラオケルームもできていて、メニューにはなぜか、マッサージ1万数千円と明記してあったとか。行ってないので定かではないが。
本日解散、飯食って寝ろ、であるが、ここからが取材人の腕の見せ所。何とか外に出たい。
同行の当局通訳を口説く。
「夜の平壌を見たいんですがね、何とか出れませんかね」
で、当局のお偉方風な、これは差支えがあるので仮にSさんとしておくが、
「後藤さん、今回はピースボートの同行取材でしょ、逸脱した行動はちょっと無理ですよ」
とお決まりの返事。
「そこを何とか」と言うと、
「そうですか? それじゃマスコミ懇談会と行きますか、私たちも日本のマスコミには言いたいことありますので」
日本のマスコミがどういわれようとかまわない。少しでもいいから平壌の実態を見たい。で、新聞社のF氏、前述のO氏と俺の三人は当局のSさんとタクシーで出かけることにした。
 
「駅行きたいんですけど」
「駅はちょっとね」
「じゃあデパートは?」
「デパート閉まってますよ、また明日もありますから」
本当に明日行けるのかよ、明日は板門店や革命博物館、主体思想塔、地下鉄ってコースじゃないの、とまったく信じてない俺ら。
「とにかく今夜は友好を深めるということで」
と着いたのが、ほかのホテル。これまた立派なホテルで、おそらく外国人用。
でその中に、カラオケ屋。聞こえてくるは日本の演歌。入ってみると、帰国同胞なのか、どこから見ても日本人然とした客がマイク片手にうなっていた。
 
 
Ж 一見銀座の三流クラブ。チマチョゴリを着たお姉さんが、にっこり笑っておしぼりを手渡してくれる。
「何します。とりあえずビールでいいですよね、じゃあ私が早速」
と頼んでもいないのに、Sさんさっさと選曲、歌い出したのはなつかしの石原裕次郎、見ると画面には、若き頃の浅丘ルリ子と裕次郎の映画の1シーン。
あのさ、話しに来たんじゃないの、うるさくって話しどころじゃないよ。
しかし、これも平壌の実体か。俺たち3人はビール1本ずつ空けながら、明日からどんな取材ができるか思案する。
「後藤さんも1曲」って、いいよここまできて。うるさいし、疲れてもいたので「もうここ出ましょう」と言うと「そうですか、そうしましょう」とあっけない返事。おいおい、マスコミ懇談会じゃなかったのかよ。
「じゃあお勘定してください」
「はーい」
とこれまたチーママ風が小さな紙をすっと差し出す。
で見ると、ビール3本が1万4千円! ドルやウォンじゃなくて、はっきり円。
「ぬあんだと!!」
どう考えても歌舞伎町以上のボッタクリ。
当局お偉方Sさん、あっち向いちゃってる。
分かった、分かったよ、君たち、どこで学んだか知らないが、そうした資本主義は堕落だぜ。あの偉大なる総書記にチクッちゃうぞ、この、いいのかそれで、崇高なる人民共和国が。ええ、平壌市民の月収は夫婦で300ウォン、約1万8千円が平均だといったじゃないか。
 

民族ダンスでしっかり交流してきました
 
 
Ж ここに来て我々は確信した。もうすぐこの国の、この世界でも類まれなる社会主義体制の崩壊も近いと。やはり世界は金か、今のうちに円を稼いでおきたいんだな、もうすぐ市場経済が来ることを知っているんだな、あのね、言っておくけど、市場経済なんていいもんじゃないぜ、この国にはいないホームレスも生むんだぜ、リストラ、失業、一家心中なんてのもあるんだぜ。何、それより悲惨なことがここにはあるって? まあそれは想像できなくもないが。
分かりました、そう来るならこちらもせいぜい逸脱させてもらいます。覚悟してご協力ください。




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