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後藤和夫
text by Kazuo Goto
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「オイ! ここはモノポリー発祥の地なんだぜ」
って誰も知らない。アメリカ人め! |
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Ж 我が家でかつて人気のあったゲームに「モノポリー」がある。
四角い板の双六ゲームで、何人でも遊べる。各自同じ資金を手に、サイコロにしたがって、桝目をぐるぐる回る。止まった所に通りの名前が書いてあって、止まった者は、その土地の権利を手に入れることができる。他の参加者はそこに止まると、権利者に金を取られる。
そうやって、土地を数多く手に入れ、やがて家やホテルを立て、地代を上げて、各自がマネーゲームを続ける。勿論思わぬ罠もあって、倒産の憂き目や、火事や、寄付金の強要、土地を買収されたりもする。
上手く立ち回ると、億万長者になる、その逆もある。最後には誰かが一人勝ちする。
アメリカンドリームをそのまま体現した弱肉強食のゲームだ。
実にアメリカらしいゲームだ。
このゲームの通りの名は、現実の町から取っている。
1930年代、不況にあえぐアメリカで、その街に住む老夫婦が、せめてゲームの上だけでも金持ちになりたいという夢が生んだゲーム。このゲームを発明した夫婦はこれで、本当に大金持ちになったとか。
アメリカならではの物語だ。
その街の名はニュージャージー州アトランティック・シティ。西のラスベガス、東のアトランティック・シティと言われるカジノの街だ。
もう10年以上前、俺はニューヨークから車を飛ばしてこの街に行ったことがある。目はきょろきょろと通りの名を探した。
「あった、あった、ST.CHARLES PLACE、BOADWALK、BALTIC AVENUE… ハ、ハ、ハ、みんなゲームどおりだ」
ほとんどアホだが、嬉しかった。いつも我が家で遊んでいたゲームの街が目の前にあるのは楽しかった。
俺にもアメリカおのぼりさん時代があったのだ。
カジノに入っても当たりかまわず、「お前知ってるか? この街はモノポリー発祥の地なんだぞ」と話しかけた。
しかし、誰もその事実を知らなかった。街に「モノポリー発祥の場所」なんていうモニュメントがあるかと思って探したがそれもなかった。がっかりした。
なんて奴らだ。自分の国の、街の文化を知らないのか!
アメリカめ、アメリカ人め、お前らには文化を愛するって気持ちがないのか。
空虚に伸びたカジノのビル、能天気な青空、意味なく広い道路、大食と浪費と、貧富の差。世界で一人勝ちをもくろんでいる国アメリカ。
京都議定書を蹴っ飛ばし、沖縄での強姦魔を引き渡さずに、自国のためならミサイル防衛計画をどんどん推進し、世界中にマクドナルドの毒を撒き散らし、ぶくぶくと太り、世界の警察官面をして恥じないゴーマンな国アメリカ。
まったくとんでもない国だ。
しかし、同時にあらゆる可能性があるアメリカ。自由があるアメリカ。
駄目になるのも、成功するのもお前次第、誰も助けちゃくれないが、個人は尊重し、違いを認める国民性。ハードボイルドを生んだ国アメリカ。
アメリカにはいつでも夢がある。
極貧にあえぐ若者がいきなり金持ちになったり、ポルノ女優がハリウッドでビューしたり、ビデオ屋のアンチャンが人気映画監督になれたりする。個人の実力次第。運次第。
キューバからゴムボートに乗ってきた亡命者が、明日メジャーのグランドで、何億もの契約金でホームランを打っている国アメリカ。
まったくアメリカについて考えるのは厄介だ。
アメリカには何回も行ったが、国家としてのアメリカについて反感を抱きつつ、アメリカのメンタリティについては魅力を感じつつ、矛盾の中で、今回は、アトランティック・シティを再び訪れることになった俺だった。
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