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| −乱歩作品の『芋虫』を、監督は前まえからずっと撮りたかったそうですね。主演女優に岡元さんを起用しようと思ったきっかけは? 佐藤 (僕がやりたかったってのを)よく知ってますね。『芋虫』のヒロイン時子は、原作ではもっとふくよかな中年女性なんですよ。ただ、江戸川乱歩小説の持っている普遍性というものは、時代に左右されるものでもない。だから、岡元さんのような現代的なルックスの女性を使うのに特に抵抗はなかった、というより自分自身も現代に生きているわけだから、表層的な部分に惑わされたくなかったという気持ちもあった。そういう方向性でやりたかったのが『芋虫』だったわけで。 岡元 普遍性ってわかります。普遍的な愛とか感情とかは時代がどうとか関係ないですものね。ただ、時子の場合、その愛情が戦争で四肢を失った夫への過激な行動になって現れるわけで。だから、彼女の気持ちはわかる。いや、わからないこともないかなってぐらいですかね。そういう共感性をぐーっと膨らませてイメージしていくという。でも、自分ではあそこまではやらないですよ(笑)。 佐藤 でも、ムチでぶってるシーンは本当に気持ちよさそうだったよ。 岡元 …ええ、気持ちよかったかも(笑)。 佐藤 まぁそういう感情はみんな少なからずも持っているわけですよ。素直な気持ちを演技にのっけて出せるのが、彼女の良いところだからね。柔軟性があるというか。 −愛ゆえの狂気を模索する夫婦と、2人を覗き見る平井太郎の醒めた存在感が対照的でおもしろかったです 佐藤 平井太郎の視線ってのがオレに近いのかなって思う。これまでの自分の作品も、わりとクールなタッチっていうのかな、愛し合う者同士の空虚感だったり空しさだったり、そういうものを追ってしまうんだよね。時子と旦那との世界っていうのは凝縮された愛の形なんですよ。それが人から歪んで見えるとか2人には関係ないんだよね。でも、それを“見る”平井太郎の存在、そう江戸川乱歩ならではの“毒”が出てきて初めて世の中に対峙するアンチテーゼの存在として明確になってくるんだよ。こっち側の世界と向こう側の世界、みたいな。 岡元 『芋虫』の登場人物はみんな何か欠落してますよね。とくに愛情の面では。みんな満たされていないって。そういうところは現代の人たちにも似ている部分があるなぁって思いました。 佐藤 だよな。結局、普遍性なんだよ。乱歩の「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」の言葉のように、現代の価値観も所詮、まやかしのようなものなんじゃないのかって。ひとつの価値観ってなにかをきっかけに崩れてしまうからね。だから、この『芋虫』の中にある普遍性って、50年後や100年後に見ても古くささは感じないんだろうなって思う。他の国で上映されたら…どうなんだろう? 岡元 宇宙人の映画って思われるかもしれませんよ(笑)。 佐藤 異星人か、それもまたいいかも。でも(オムニバス4作品の中では)一番動物的な作品だと思うんだけどな。 −話は変わるんですけど、今回、平井太郎が2人の行為を覗いているわけじゃないですか。その覗きについて…まぁ男は誰しも穴があれば覗きたくなり、双眼鏡があれば、向かいのマンションにレンズを向けたりするわけで 岡元 そういうのって男の人の方が強いんじゃないですか。 佐藤 うん、そうかも。 岡元 女性の場合は、見ることに対して、そこまでウキウキすることないと思うんですけど。 佐藤 覗くということでは、オレはやっぱりレンズなりカメラが好きなんだよ。子供のころに、近くで火事があったとき、兄貴のカメラを借りて撮りにいったんだよ。フィルムも入ってないのに、パシャパシャ押して、頭の記憶の中に焼きこんでいく。生身で見るより、レンズを通して“覗く”という。そういうのがやっぱり(男には)あるんだよ。女性の場合は、“見る”より“見て”“見られたい”になるんじゃないのかな。 岡元 男の人は見るという視覚なわけで、女の人はたぶん感じるというか感触の方だと思うんですよ。 佐藤 平井太郎は見て、自分の洞察力をもって探っていくというところがあるからね。でも、時子の場合は見られている(覗かれている)というのを肌で感じていたのかも知れないと思ったんですよ。そういった秘密がばれていることや、愛情、そして良心の呵責なんかがごちゃまぜになって旦那にぶつけているみたいなね。で、そういった性を超えた自分の傲慢さみたいな部分を、旦那の下からの目によって探られている。私の嫌な部分を見てるんじゃないかっていう。そこに時子のエロスと、人としての“毒”が揺らめいて見えるわけで。 岡元 その感覚はありました。実際に旦那様が転がっているわけですから。目線は自分の方が絶対高いという状況で明らかな上下関係があって、旦那がそういう目をするわけですよね。そうすると気持ち悪いというかむかつくという感情も芽生えてくる。そう思わせてくれる、大森南朋さんの演技、サスガ!でしたけど。 佐藤 物語の設定として、時子を旦那が下から見上げていて、平井太郎の目線も感じている。それでいて現実には、当然レンズがあって、彼女をカメラがとらえているわけじゃないですか。そうすると岡元夕紀子はどんどん視線によって輝いていくわけですよ。動物的な感性みたいなものでね。 岡元 はぁ、まぁ。 佐藤 あと、旦那が彼女の身体を、触覚を頼りに這っていくシーンがあるんだよね。彼女の身体を知っているから出来ることなんだけど。ああいうもどかしいがゆえに感じるエロスというものもあると思う。そういえば、そのシーンで彼女が撮影現場でオレに提案したことがあってね。妻である私が旦那を誘うようにやりたいんですって。あ、こいつわかってるなって(笑)。 岡元 ふぅん 佐藤 ふぅん? こういうふうにやりたいですってオマエがいったんだぞ。 岡元 え!? 私が言ったんですか。 佐藤 そう、だから、こいつわかってるなって思ったんだよ。違うの? 岡元 フフフ、まぁそういうことですよ。 |
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