
雪山で下界との連絡手段を絶たれた集団が、狂気の大男に虐殺されていく。設定自体は新味に欠ける。しかし、惨劇の過程でキーパーソンになっている、前田亜季演じる少女・ゆいの存在が面白い。17歳で妊娠した彼女は、両親との関係もうまく築けず、終始苛立ちを感じながらも感情を表に出すことはない。山小屋で厭世的に生きていた(であろう)盲目の大男と、不器用ながらもコミュニケーションを交わすシーンに、彼女がいかにこれまで孤独を抱えながら生きてきたのかが推し量れる。孤独な者同士の魂の触れ合い。やがて男は暴走していくが、ゆいは狂ってしまった彼をどこかで信じようとする。しかし、殺人鬼と化した男にとってゆいとの関係性など無に等しく、絆が断ち切られたことを悟ったゆいは男を衝動的に打ち殺してしまう。そんな彼女を、もうひとりの生き残りの男の子が“バケモノ”と呼ぶ。バケモノじゃねぇよ、人に裏切られるってことはそんなにも哀しいことなんだぜ。これはホラーではなく、17歳の少女の、青く、切なく、歪んだ青春ムービーだと思う。(栗尾知幸) |
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事故で性的不能になった美青年・正巳と、不倫相手との情事に溺れる図書館司書の類子。かつて同級生だった二人が再会し、心身ともに結ばれていく様を、甘美な映像と音楽で描き出すラブストーリー。
心理描写が多く映像化は難しいとされてきた、直木賞作家・小池真理子の初長編映画化としても注目を集めている同作。三島由紀夫へのオマージュが散りばめられている原作だけに、劇中に漂うエッセンスは良くも悪くも文学的。だが、主演の板谷由夏と村上淳が体当たりで挑んだ性愛シーンは、互いを想い合う気遣いから生まれる緊張感に満ちていて、その濃密な空気感に正直グッときた。エロス作品には違いないのだろうが、クラシカルな語り口といい、艶やかな映像といい、その知的な世界観はまるで一冊の本を読み終えたかのような充実感がある。(戸田美穂) |
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人気作家・東野圭吾の同名小説を映画化。発砲事件に巻き込まれ、拳銃で脳を撃ち抜かれた純一。脳移植を受けた彼は、移植された脳の持ち主に人格を支配されていく…。原作は、脳を移植された純一が凶暴な人間に変化していく過程と、脳のドナーを探るミステリーの部分が色濃く反映されたものだったが、映画では純一と恋人・恵の恋愛をメインにしたラブストーリーに仕上がっている。それゆえに、他人の脳を移植されることや別の人格に支配されるという恐怖感が伝わってこないのが残念なところだが、純一を体当たりで演じた玉木宏、純一の変化に戸惑いながらも見守る恵役・蒼井優の熱演は一見の価値あり。若さあふれる2人の演技を堪能してほしい作品だ。(樋口牧子) |