
日本から最も近いヨーロッパの国フィンランドの首都ヘルシンキに食堂をオープンさせた日本人女性と、そこに集まる人々の人間模様を描いた『かもめ食堂』。全編フィンランドロケを行った本作だが、荻上監督が女優のもたいまさこと「次は外国で撮りたいですね」と冗談っぽく話していたのがきっかけだとか。
「そうなんです。それでプロデューサーの方から『フィンランドで食堂の映画をやりませんか?』というお話をいただいたんです。もたいさんが『私もそろそろ朝定食しか出さない食堂をやりたいわ』みたいな話をされていたそうで、今回の話に行き着いたみたいですね」
これまでオリジナル脚本ばかりだったが、荻上監督にとって『かもめ食堂』が初の原作ものとなる。しかも、その原作というのが、女性を中心に絶大な支持を得る人気作家、群ようこの書き下ろし。
「まず映画の企画があって、それから群さんにお願いしたんです。それをもとに私が脚本に起こしたんですけど、書いている途中で悩んでしまって。私は今まで、主人公に目的や葛藤があって、それを乗り越えて成長していくというような書き方しかしてこなかったので、どうすればいいのかわからなくなって、『この主人公の目的は何ですか?』と群さんに直接電話したんです。そしたら『目的とかそういうことじゃないのよ、これは捨ててきた人の話なの』と言われて、『あ、そっか』と。ハリウッドで映画を勉強したこともあって、パターン化された脚本の書き方に慣れてしまっていたんでしょうね(笑)。主演の3人(小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ)にもすごく助けていただいたと思います。とくに、(かもめ食堂の女性店主である)サチエがああいった美しく凛とした女性になったのは、小林さんのおかげですね」
フィンランドの映画といえばアキ・カウリスマキ監督が有名だが、カウリスマキ監督の『過去のない男』('02)の主演男優マルック・ペルトラが、サチエにおいしいコーヒーの入れ方を伝授するミステリアスな男の役で出演している。
「フィンランドで映画を撮るにあたって、フィンランドの映画を何本か見ました。そのなかだとアキ・カウリスマキ監督の映画が一番おもしろかったですね。でも、マルック・ペルトラさんは、実はオーディションだったんです。むしろカウリスマキ監督を意識したくなくて。ほかのキャストもすべてオーディションで選びました。ほとんどが素人だったので大変だったけど、最後に『映画に出れてうれしくて』と泣いてたりして、こちらとしてもうれしかったですね。あと、スタッフに関しても日本から全員を連れて行くことはできないので、フィンランドの方にお願いしました。私たちは『時間がない!』ってあせって映画を作ることに慣れてしまっているけど、彼らは絶対に走ったりしないし、すごくマイペース。最初はあまりにのんびりしているからイライラしましたけど(笑)、国民性の違いだと思って開き直ったら、すごく楽しくなりましたね」
舞台となるのが食堂だけに、おいしそうな料理もこの映画の大きな見どころ。おにぎり、とんかつ、豚の生姜焼きなど、どれも見ているだけでお腹が空いてしまいそうだ。
「今回、食べ物がもう1つの主役なので、絶対においしそうに見えないとダメだなと。フードスタイリストの方と初めて会ったときに、おいしいおにぎりが握れそうな手だなと思ったんですけど、ほんとにどれもおいしくて(笑)。お客さん役のエキストラの人たちにも好評で、『フィルムが回っていないときは食べるな!』ってストップをかけたぐらいだったんです(笑)」
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PROFILE
荻上直子 NAOKO OGIGAMI

'72年千葉県生まれ。'94年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で学ぶ。'00年に帰国し、第23回ぴあフィルムフェスティバルのPFFアワード'01で音楽賞を受賞。PFFスカラシップ作品「バーバー吉野」('03)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞に輝いた。監督2作目は「恋は五・七・五!」('04)。TVドラマ「サボテン・ジャーニー」('04)、「やっぱり猫が好き2005」('05)の脚本も担当した |
『かもめ食堂』
●3/11(土)〜シネスイッチ銀座、109シネマズMM横浜ほかにて全国順次公開
フィンランドの首都ヘルシンキにオープンした”かもめ食堂”を舞台に、女性店主のサチエ、ひょんなことから店を手伝うことになる日本人観光客のミドリ、空港に荷物が届かない訳ありな女性マサコと、フィンランドの人々との交流を描く。淡々とした物語のなかに日常のささやかな幸せが垣間見え、温かな気持ちにさせてくれる作品だ。
>>『かもめ食堂』公式サイト |
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