心を病んだ姉・千春(藤真美穂)の療養に付き添い、自然あふれる嬬恋を訪れた妹の深雪(工藤里紗)。ふたりは、青年(高野八誠)とその父親(田中要司)、ヒッピー風の女性・かず子(今宿麻美)が営む小さなホテルで療養するうち、自分たちの”幸せ”を見つめ直していく…。“かっこいいビジュアル”を追求してきたという、22歳の映像作家・柿本ケンサクが、数々のグラビア誌を席巻する人気アイドル・工藤里紗を主演に迎えて手がけた『スリーピングフラワー』。劇場映画初監督、映画初主演と“初めてづくし”の2人と、脇を固めたという藤真美穂とマメ山田にとって、この映画での体験は何をもたらしたのか。そして、映画を通して何を伝えようとしたのだろう。
――工藤さんは、『スリーピングフラワー』での主演を伝えた新聞記事で、何よりも「キレイに映っていたい!」って言ってましたけど、実際いかがでしたか?
●工藤 映像のすべてがキレイでした。物語の世界に、私をキレイに溶け込ませくれたような。「いろんな表情、撮ってもらえたな」って思いました。ですけど、後で見直したら反省点ばかり浮かんで、恥ずかしくなって…。
●藤真 でも「深雪は里紗ちゃんそのもの」って思えたくらい自然な演技だった。「里紗ちゃんが深雪の役に近づく」のではなくて「深雪が里紗ちゃんに近づいてる」って思えて、よかったよ。
●工藤 そうですか? 確かにそういう気持ちで演じていたかも。例えば、田中(要司)さんと高野(八誠)くんに「似てますよね」って言うはずが「似てない」って、本音出ちゃったり(笑)。でも、そういう自然に沸いた気持ちを、監督がスッと受けとめて採用してくれましたよね。
●監督 受け止めたというか、役者に任せっ放しで。僕はキャラクター先行でストーリーを練るのではなく、例えば“工藤里紗が一番引きたつキャラ”を考えて、シナリオの中で自由に遊んでもらう。僕の仕事は、キャスティングと脚本で半分以上終わりですね。里紗ちゃんは脚本段階で「こういう子かな」って思って書いていたし。あとの方も、自分の頭の中に浮かんだ人を配置しただけで。
――ですけど、田中さんやマメさんが参加してくれるか不安だったのでは?
●監督 その辺、図太いんですよ。「オヤジ役は絶対ボバ(田中)さん!」って、出演OKかどうかも分からぬまま、脚本を書き始めちゃって。実は撮影直前までボバさんの返事待ってたんですよ。マメさんは僕の一番年上のマブダチなので、その辺は気にせず…。
●マメ そう。だから、こっちも何も気にはしなかった(笑)。
――深雪の姉・千春役の藤真さんは、表情や僅かなセリフで微妙な演技が求められる役でしたから、“自由に”と言われても結構悩んだのでは?
●藤真 もう…悩みました。監督と1時間以上話し合って「病的ではなく、あくまで透明感のある女性を演じて」と言われて。元気じゃないけど意志は明確、でも余計なことは喋らない。病気っぽいけど、ふとした瞬間しっかり存在感を放つ…。そんなギリギリのラインで演じたつもりです。
●工藤 食事中の何気ない会話にも、ただ料理しているだけでも、ボーッとしてるようで、お姉ちゃんの存在感、すごく引き立ってるんですよ。
●監督 藤真さんはキャリアのある人だから。写真を見て「この人はやってくれるな」って感じたので、それだけでキャスティングしたんですけど…。期待通りでした。
●藤真 えっ、写真見ただけですか!?
――今回、避暑地の嬬恋を舞台に選んだ理由は?
●監督 今回こだわったのが“登場人物以外の人を映さない”こと。そのくせ僕は“引き”で撮るのが大好きで。なので人が映らない場所を探してた結果、こういう避暑地になったという…。
――そういう寂しい土地でのロケで、初主演の工藤さんは不安とかありませんでしたか?
●工藤 不安でしたけど、共演の皆さんに自然に雰囲気を作っていただけて、特に藤真さんの顔を見るだけで、深雪になりきれたくらい。というか、もう「藤真さん」とは呼べない、完全にお姉ちゃんです(笑)。ロケ中から親身に相談に乗ってくれて。
●藤真 撮影中は泊まる部屋も同じにしてもらって。本当の姉妹同然でしたから。
●監督 僕にとってのマメさんのような人だ(笑)。
―― マメさんから見て、監督の印象っていうのは?
●マメ いやいや若いのに監督の演出はスゴイと思いますよ。だって出会ったのが…。
●監督 確か僕が19歳のころ、4年近く前ですか。それから僕の作品のほとんどに出てもらって。なくてはならない存在ですね。
――印象的なシーンに、夕暮れ時の断崖で深雪と千春がケンカするシーンがありました。ドラマ的にも映像的にも大きなポイントだと思いますが。
●工藤 私、ケンカしたくなかったんですよ。一緒の部屋でお姉ちゃんとなかよくなれて、嬉しいなって実感したころに、そのシーンを撮ることになって…。
●監督 ただ、それくらいの関係を築いたタイミングじゃないと、撮れなかったかな。
●工藤 そうなんですよね。本当に親しくなれたから、思いきりぶつかれたっていうか。
●藤真 あのシーンの顔はふたりとも役に入っていて、すごかった。夕暮れ時の暗いシーンになったので、良かったかも…(笑)。
●監督 本当に陽が沈んでいるのに照明もない中、スタッフは僕も含めて3人で。ふたりが叫びまくって動きまわる中、映像も音も荒れまくるんじゃ…と心配したれど、録音もカメラマンも必死で動いてくれたおかげで、バッチリだった。あのシーンは、役者だけじゃなくて、スタッフも一丸で必死で演技した瞬間だった。「映画ってこうじゃなきゃダメなんだ」って、それまでの僕の考え方に、水をぶっかけられたっていうか、驚かされた瞬間でした。
――この作品には癒やし系ムービーのようでいて、意味深な演出もあります。例えば、深雪にしか見えない、かず子(今宿麻美)。幽霊なのか生きてるのか分からない彼女の存在は、何を伝えたかったのでしょう?
●監督 かず子の存在や終盤については、如何ようにも解釈できる演出にして、判断は皆さんに任せています。ただ、幽霊オチではなく「どっちが病気なの?」っていう視点を投げかけたかった。この映画の裏テーマは、いわゆる「健常者が正しいわけでもない」と言うか。かず子は、本当は始めから歩き回っている存在で、それを「幽霊だ」と思い込むから幽霊にしか見えない。実際は、かず子や深雪が正常で、千春や正午は絶対数の多い側なだけで、数が多いという理由だけで正常に見えるのは違うんじゃない? そういう気持ちを込めています。
●工藤 私は、かず子は存在していてほしい。この映画って、現実でのいろんな価値観を置き換えて、考えて見れると思うんですよ。「いい」って言われることが「本当にいいの?」って。病的なもの、マイナスなイメージが何でいけないの?って思えたし。
――終盤、姉妹が別れるシーンも印象的で。深雪の自立への決意がこもったシーンですが、実は、千春の妹からの自立という意味も込められている…そう感じとれました。
●藤真 きっとそうですね。執着してましたから、妹の幸せに。だって、正午を恋人に押し付けたり(笑)。でも、それが良いことではないと気付いた。本当に深雪を愛していたんでしょうね。
●工藤 あのシーンは、本当にお姉ちゃんの愛を感じて泣けましたよ。何か声をかけてくれるの?って思わせておいて、行ってしまって…。それでも、シルエットから優しさが伝わるんです。
●監督 泣くシーンではなかったのに、ふたりとも泣いて。特に藤真さんはホントよく泣いてた。
●藤真 私は“泣きの藤間”って言われるくらい、どの映画でも泣くシーンがあるんです。ケンカのシーンも別れのシーンも、撮影の後もずっと泣いていました。演技に入り込んで泣くから、テンション上げるのが大変で。だから…その、ストレスがたまりました(笑)。
●監督 ボバさんも高野くんも毎日誰かが感極まって、「あ、泣いちゃった」って泣いていたんけど…。あれ? なんでマメさん、泣かなかったんだろ?
●工藤&●藤真 (爆笑)
●マメ …………。
●監督 次の映画は「マメ山田の涙」をテーマに撮りますね(笑)。
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『スリーピングフラワー』
●渋谷シネ・ラ・セットほかにて順次公開
避暑地での療養を薦められた姉・千春(藤真美穂)に付き添い、小さなホテルを訪れた深雪(工藤里紗)。姉が部屋で休息している間、彼女は宿の青年・正午(高野八誠)や釣り人・峰さん(マメ山田)と親しくなり一緒に遊んで過ごす。だが、日を重ねるにつれて、深雪は身に覚えのない疲労と倦怠感に襲われ…。(配給・フォルム)
※11月18日(金)に、渋谷シネ・ラ・セットにて、工藤里紗、藤真美穂、柿本ケンサク監督の舞台挨拶が催されます! 詳細は公式ページへ
>>『スリーピングフラワー』公式サイト |
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