「FILM」
「DVD」
「VIDEO」
「SOUND TRACK」
「BOOK」


 
『グッバイ・ジョー』

高橋 諭治
text by Yuji Takahashi
どん底で聞こえた“アイ・ラブ・ユー”
 『バック・イン・ザ・USSR』『パルプ・フィクション』などで知られる中堅俳優フランク・ホエーリーが初めてメガホンを執り、世代の近い役者仲間ヴァル・キルマー、イーサン・ホーク、ジョン・レグイザモが出演。サンダンス映画祭にも出品されたインディペンデント・ムービーで、なぜ日本未公開に終わったのかまったくわからない家族劇の秀作だ。

 主人公は、アル中で暴力的な父親(キルマー)を持つ少年ジョー。家族崩壊の劣悪な環境で生きる彼が、ついには現金強奪の犯罪に手を染めていく物語。筆者の知人が語った「こりゃ少年版『ロゼッタ』ですね」という感想が、この映画の内容をうまく表現している。

 全編に渡ってカメラは少年の行動を淡々と追っているのだが、その成り行きで映し出されるのは、少年の友人が母親を罵倒する光景であり、なぜかいつも怒鳴り散らしているバイト先の食堂店主の姿だ。美しい田舎町の住民が、皆さりげなく壊れている恐ろしさ。希望などどこにもない。そんなことはとっくに承知といった感じで、誰にも救いを求めず、ただ“ひとりで生きる”ジョー少年の無言の抵抗が胸を打つ。14歳の悪ガキに「アイ・ラブ・ユー」という言葉の重みを教えられるクライマックスに至っては、もはや呆然とするほかはない。
JOE THE KING
監督:フランク・ホエーリー
製作総指揮・出演:ジョン・レグイザモ 
出演:ヴァル・キルマー
   イーサン・ホーク
1999年 アメリカ
1時間38分
16000円
タキコーポレーション
8月25日発売


 

「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.