ミュンヘンとモントリオールの狭間の時代、アメリカにスティーブ・プレフォンテインという長距離ランナーがいた。彼は、常に全力疾走した。ドラマは、そのポリシーをめぐり、最初から飛ばしすぎるなと諭すコーチとの対立から生まれる。
つまりは、天才ランナーと鬼コーチの関係を通して描く実話ものなのだが、"走りは芸術だ"と勝ち方にこだわるスティーブの姿勢によって、近代スポーツのみならず勝ち負けに執着しきったいまどきの風潮に冷水が浴びせられる。勝つための用意周到な駆け引きよりも、全速力で熱く生きることのほうに上位概念を抱いてしまうのは、やはりスポ根世代だからだろうか。
感動を煽らずに、事実を淡々と積み重ねていく演出と脚本は、『チャイナタウン』『M:I‐2』のライターにして、監督作『マイ・ライバル』で陸上選手の生理に迫ったロバート・タウン。この映画では意外な事実も知らされた。科学的な走りを追究する鬼コーチの手で、ワッフルの焼き型を元に造られた靴底による特製シューズが、あのナイキ(=勝利の女神)を生んだ事実を知り、単なるブランド信仰を改めて愛用の三本線から乗り換えたくなる。そしてスティーブは生きることも急いでしまった。モントリオールの栄光を前に24歳で夭折。まさに駆け抜けた生涯だった。 |
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