僕の知りあいには日本映画の古典ファンが多いが、 その中の一人に「時代劇だけは大嫌い」という人が
いる。最後は斬りあいでドラマが解決するのが納得 いかないという。時代劇好きの僕にもその気持ちは わかる。今も昔も、スターが悪人をバッタバッタと
斬り倒す殺陣が時代劇の売り物で、それがなければ ドラマは成立しない。話し合いの解決ではファンが 納得しないし、1本の刀での斬れ味がどの程度か知る人には、馬鹿げたジャンルなのだろう。
ヒューマン時代劇の秀作となった『雨あがる』は、 斬りあいでドラマが解決しないぶん、前述の知人の
不満は解消されたが、凄いのは主演の寺尾總だ。武 士の所作は完璧で、刀を差せば武士がどう歩くかな
ど、そのリアルさは半端でない。白眉となるのは彼 が大勢に襲撃を受けるシーンで、彼は峰打ちで敵を
撃退する。この峰打ちの凄惨さは、日本映画史に記 すべきと言えるもので、鉄の固まりが人体にどれほ
ど損傷を与えるかをこれほど実証した映画も珍しい。 刀を巧みに持ち替える彼の手の動きをとくと見よ!
あまりの怖さに正直、目を伏せた。60年代に量産 された“残酷時代劇”は多数の傑作を生んだが、ま
さかミレニアムにこんな恐ろしい時代劇に出会うと は思わなかった。 |
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