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『雨あがる』

加藤 久徳
text by Hisanori Kato
あまりの怖さに目を伏せた恐怖の残酷時代劇
 僕の知りあいには日本映画の古典ファンが多いが、 その中の一人に「時代劇だけは大嫌い」という人が いる。最後は斬りあいでドラマが解決するのが納得 いかないという。時代劇好きの僕にもその気持ちは わかる。今も昔も、スターが悪人をバッタバッタと 斬り倒す殺陣が時代劇の売り物で、それがなければ ドラマは成立しない。話し合いの解決ではファンが 納得しないし、1本の刀での斬れ味がどの程度か知る人には、馬鹿げたジャンルなのだろう。

 ヒューマン時代劇の秀作となった『雨あがる』は、 斬りあいでドラマが解決しないぶん、前述の知人の 不満は解消されたが、凄いのは主演の寺尾總だ。武 士の所作は完璧で、刀を差せば武士がどう歩くかな ど、そのリアルさは半端でない。白眉となるのは彼 が大勢に襲撃を受けるシーンで、彼は峰打ちで敵を 撃退する。この峰打ちの凄惨さは、日本映画史に記 すべきと言えるもので、鉄の固まりが人体にどれほ ど損傷を与えるかをこれほど実証した映画も珍しい。 刀を巧みに持ち替える彼の手の動きをとくと見よ!

 あまりの怖さに正直、目を伏せた。60年代に量産 された“残酷時代劇”は多数の傑作を生んだが、ま さかミレニアムにこんな恐ろしい時代劇に出会うと は思わなかった。
監督:小泉堯史 
出演:寺尾 聰
   宮崎美子
   三船史郎
1999年 日本
1時間31分
¥16000
アスミック
6月23日発売



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