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『最果ての地』

高橋 諭治
text by Yuji Takahashi
さすらいの映画作家、アラスカに立つ
 つい先日、プロモーション来日した『ガールファイト』のカリン・クサマ監督にインタビューした際、エグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねるジョン・セイルズに話が及んだ。「ここ数年のセイルズの映画は日本で公開されてないんですよ」と私が教えると、彼の門下生であるクサマ監督は「えーっ、それは驚きね!」と言っていた。どういう意味の“驚き”だったのか、定かではない。

 公開&未公開を問わずセイルズ作品を丹念に見ていると、“マイノリティの人生を描く社会派インディーズ作家”といった一般に広く浸透しているイメージは、もはや彼の一面を表しているに過ぎないことに気づく。特に際立っているのは“土地”に対する並々ならぬこだわり。ルイジアナ(『パッション・フィッシュ』)、アイルランド(『フィオナの海』)、テキサス(『真実の囁き』)などを舞台にしたここ数年の作品群は、ドラマツルギーの枠を守りつつも、ロケ地の文化や歴史がおぼろげに浮かび上がる興味深い構成になっている。

『アリスの恋』へのオマージュのようなものが感じられる女性歌手と元漁師の恋物語『最果ての地』も、観光地化が進むアラスカの現状に一石を投じた作品。旅行者(=外部の人間)が撮った物珍しさは微塵も感じられず、カメラの目線がしっかり土地に根づいている点は不思議というほかはない。また、こうしたウェルメイドな“文化映画”が日の目を見ないことに驚く人がいても不思議ではない。
LIMBO
監督・脚本:ジョン・セイルズ 
出演:メアリー・エリザベス・マストラントニオ 
   デヴィッド・ストラザーン
1999年 アメリカ
2時間7分
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
15300円

●近年のセイルズ作品で、唯一日本ではビデオすら出ていない作品が『MEN WITH GUNS』('97)だ。スペイン語で撮られたというこの作品、クサマ監督いわく「グレートな映画よ」とのこと。輸入ビデオで取り寄せるべきか!


 

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