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『追う男』(上・下)

轟夕起夫
text by Yukio Todoroki
80年代半ば、ゆらゆらと陽炎が立ち上る優作
 映画のみならずTVドラマの世界でも傑出した作品を残した松田優作。これは、NHK“ドラマ人間模様”の枠で4回(1986年7月12日〜8月2日)に渡って放映されたものだ。

 優作の役は、しがない興信所の探偵。というと“工藤ちゃん”こと『探偵物語』を即座に思いだすが、ここではもっとワケありのうらぶれたキャラクター。集金した4800万円を手にしたまま失踪した銀行の課長の行方を追いかけていたつもりが、その実、自らの裏街道人生の“負債”に追いかけられることになる。そう、タイトルは『追う男』だが、内容は「追われる男」であるところがミソ。いまのTVドラマでは味わえない、カッチリとした構成に身を委ねたい。

 ちなみに脚本は、映画『それから』(85)、『華の乱』(88)でも組んだ“優作ファミリー”のひとり、筒井ともみ。失踪した課長の女房役、烏丸せつ子と優作のツーショットがよく、音楽を担当した井野信義のミュートなジャズ、生々しい音響設定もまた素晴らしい。ぜひヘッドホーンでご覧になることをオススメする。

 演出は佐藤幹夫と三枝健起(『MISTY』)。余談だが、第1話のあるシークエンスで、背景から若きダウンタウンの漫才が聞こえてくるのがストレンジ。それと生瀬勝久もチラリと出演。この人は、ご存知、『SMAP×SMAP』でキムタクと『探偵物語』のパロディやってましたよね(成田三樹夫役!)。

 1986年といえば優作は、このあと『ア・ホーマンス』を自作自演したわけで、やや不遇をかこつ80年代後半にさしかかる直前の、陽炎がゆらゆらと立ちのぼっている優作と出会うことができる。
演出:佐藤幹夫/三枝健起 
出演:松田優作
   橋爪功
   烏丸せつ子
1986年 日本(TV)
各巻1時間30分
各9800円
NHKビデオ
発売中


 

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