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『降霊』

宇都宮秀幸(編集部)
text by Hideyuki Utsunomiya
お茶の間を凍らせた恐怖ドラマがビデオ化でも、本当に怖いのは…
 フジテレビ系列には和製ホラーマニアのプロデューサーでもいるんでしょうか? 鶴田法男参加の『ほんとにあった怖い話』に続き、幽霊を撮らせたらこちらもスゴイ黒沢清がゴールデンタイムのお茶の間をいきなり固まらせたのが本作『降霊』だ。(放映時には『ウ・シ・ロ・ヲ・ミ・ル・ナ』の副題が。言われなくても見ないって…)

 音響技師の役所と主婦の風吹はごく平凡な夫婦。ただひとつ特殊なのは奥さんが強力な霊能者であること。家計の足しにとパートに出ても、赤いドレスの背後霊を目撃してやめてしまう始末だ。一方、彼ら夫婦とは全然無関係に、幼女誘拐事件が淡々と発生。2つのストーリーはまるで繋がらないまま進んでいくが、やがてそれがクロスする時、とんでもない惨劇が訪れる…。

 風景に溶け込むように佇む少女の霊や、向かいに座った人の肩に指がスルッと現われる“動く心霊写 真”とでもいうべきシーンは鳥肌もの。だが、この物語で本当に怖いのは超自然現象の部分ではない。悪意のかけらもないのに、人は時として無意識に人を傷つけてしまう。そんな誰にでも思い当たる人間という存在自体の宿命的な怖さが、これ以上ないというおぞましい形で具現化されるのだ。

 全編を通して静寂が支配する作品だが、黒沢映画の静寂にはいつも緊張感が漲っている。静けさが眠気を誘うだけの淡々系若手監督とはレベルが違う。
監督:黒沢清
出演:役所広司
   風吹ジュン
1999年 日本(TV)
1時間37分
¥13800
タキ・コーポレーション
5月26日発売


 

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