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『人質』

高橋諭治
text by Yuji Takahashi
生き埋め誘拐犯VS地獄のヒロイン 仕掛けられた異常な心理戦
 大富豪の夫人が誘拐された。用意周到な犯人の青年は彼女を生き埋めにし、24時間以内に100万ドルの身代金を渡すよう要求してくる。原題の『OXYGEN』とは、欠乏すれば被害者に死をもたらす“酸素”を意味している。

 すかさず警察が身代金受け渡し現場での犯人逮捕を試みる序盤からして、小気味いいスリルを醸し出すサスペンス。しかしこの映画の魅力は、単によく“まとまっている”ということではない。出色なのはその人物描写 。目的を達成するためには仲間を殺すことを屁とも思わない犯人の異常性もさることながら、これを追いつめようとする女刑事がよりによって同業者である刑事との結婚生活に疲れ切り、愛人とのSMセックスにふけっているという設定。やがてストーリーは前半の誘拐事件はどこへやら、女刑事の腕の火傷(愛人にタバコの火を押しつけられたものだ)を見抜いた犯人が仕掛ける異常な心理戦へとなだれ込んでいく。

『恋は嵐のように』などで育ちのいい令嬢風のしっとり感を披露してきたモーラ・タイニーが、刑事としての職務と歪んだ性癖の間でもがく地獄のヒロインに扮して新境地を開拓。何ともやるせない人間臭さが、プロットそのものの面 白さをヒートアップさせる力作である。
OXYGEN
監督:リチャード・シェパード
出演:エイドリアン・ブロディ
   モーラ・タイニー
   ジェームズ・ノートン
1999年 アメリカ
1時間33分
¥16000
プライムウェーブ
発売中

●女刑事、その上司でもある夫、誘拐犯、生き埋めにされた女。サイコ・スリラーというより、4人の“四角関係”を描く奇妙なラブ・ストーリーにも見えるところが面白い。(編集部)


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