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『アンジェラ』

高橋諭治
text by Yuji Takahashi
好奇心の行く手に広がる悪夢 少女のメルヘンは残酷で甘美
 徹夜明けの午前6時頃、たまたま別の未公開ビデオに収録された予告編を見たのが運のツキ。奇妙な心のざわめきを覚え、つい寝るのをとりやめて本編を再生した私は、まるで睡魔を感じることもなく、この驚くべき傑作を見通 してしまったのだった。

 精神を病んだ母親の入院で、束の間の家出を敢行した幼い姉妹の冒険記。田舎町の自然美とカントリー調の音楽がのどかなムードを醸し出すなか、画面 にはどこからともなく白塗りの天使や謎の白馬が現れ、あれよあれよと『不思議の国のアリス』的な幻想性が溢れ出してくる。子供たちの感覚的世界に踏み込んだ一種のメルヘン映画だが、馬の下腹部のイチモツをジーッと見つめる少女の表情(!)をとらえるなど、思わずギョッとする描写 が続出。ひたすらファンタジーに傾倒するのではなく、実はこうしたセクシャルな要素を含めた“現実”のシーンの肌触りがヒリヒリする映画なのである。

 母親の愛を取り戻すために儀式めいたおまじないにふける姉妹が、いくら健気に奮闘しても家族の問題がさっぱり解決しないあたりも手厳しい。そう、イノセントな願いが“奇跡”ばかりを招き寄せるとは限らない。好奇心の行く手には、悪夢が広がっていることもある。そしてダメ押しの衝撃をもたらすのが、安易なハッピーエンディングとはかけ離れたラスト。現実と空想の狭間を浮遊する少女たちは、いったいどこへ行ってしまったのか。その答えは全身の鳥肌がおさまった頃に、見た者それぞれが探ってみるほかはない。
ANGELA
監督:レベッカ・ミラー
出演:ヴィンセント・ギャロ
   アンナ・トムソン
   ミランダ・スチュアート・ライン 
1995年 アメリカ
1時間38分
¥16000
オンリー・ハーツ
発売中

●監督はこれがデビュー作となる、劇作家アーサー・ミラーの娘、レベッカ・ミラー。劇中、明らかにモンローをモデルにした母親が出てくる。ヴィンセント・ギャロもワンシーンだけチラリと登場。(編集部)


 

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