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『アイズ ワイド シャット』

大森さわこ
text by Sawako Omori
実はウディ・アレン風コメディ?
 巨匠キューブリックの遺作にして、約10年ぶりの新作。トム・クルーズ&ニコール・キッドマン夫妻が遭遇する夫婦の危機、嫉妬。これまでの“重厚で”“冷たい”キューブリック作品とは違い、ふんわり軽い。周囲では期待ハズレの声も多かったが、コメディと思ってみれば、楽しめますよ。夜のニューヨークを舞台にした奇人カタログ。ウディ・アレンの世界を思い出した(『〜影と霧』とか)。

 トム・クルーズが夜の迷宮に入るきっかけはジャズ・クラブ。キューブリック映画とは思えぬ メロウな雰囲気。でも、彼って、もともとニューヨーク出身。しかも、ユダヤ人。アレンと根っこの部分は同じかもしれない。

 晩年は異国のイギリスに住んだ巨匠の、これは空想上の”故郷”での見果 てぬ夜の夢なのか。この映画に登場するニューヨークの街はどこかレトロで、そこが、またアレン風か。“いつもタイミングをはずす”トム君に、アレンのドジぶりが重なって見えた。

 アレンは「僕の役は全部ダスティン・ホフマンにできる」と豪語したが、そういえば、ホフマンとトム君って、『レインマン』で兄弟役。さらに『夫たち、妻たち』の“男優”シドニー・ポラックも出演している。キューブリックの遺作という重い冠は気にせず、軽い耽美コメディと思ってみれば、けっこう笑える……かも。
EYES WIDE SHUT
監督:スタンリー・キューブリック
出演:トム・クルーズ
   ニコール・キッドマン
   シドニー・ポラック
1999年 アメリカ
2時間39分
ワーナー・ホーム・ビデオ
レンタル中
※セル版は5月12日発売(¥2980)

●確かに本作は、後に喜劇として再評価される…かも。ラリった妻のタワゴトに妙に深刻になるトム君に、水洗トイレをモンタージュしたらブニュエルの『黄金時代』だよね。館内爆笑が、実はいつも先行く監督の、今回の狙いだった?(編集部)


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