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『テイラー・オブ・パナマ』

森 世一
text by Seiichi Mori
見事なまでのオーケストレーションの官能
 なんて官能的な音楽なんだろう。

 サスペンスに充ちあふれて、なお余りある。ラテンパーカーションとギターのリズムが耳につく。実に切れがよく、不思議なエキゾティシズムの渦に巻き込まれてしまう。オーケストレーションの中に見え隠れするラテンビートと、その中から湧きあがってくる、ある特殊な熱を呼びさます音楽。この物語に登場する「仕立屋」の熱とオーバーラップするように、何かが始まり、何かが起こっていくのを感じさせる。

 いく通りもあるラテンぽいリズムと、オーケストレーションされた主軸のメロディが折り重なって表れては消えてゆく。
 
 
『テイラー・オブ・パナマ』
THE TAILOR OF PANAMA

発売:カルチュア・パブリッシャーズ
CPC8-1144
2400円(税抜き)

音楽:ショーン・デイヴィ
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやアイルランドのアビー・シアターなどの公演に参加。映画の代表作は『十二夜』('96)ほか
この音の構造そのものが、実にサスペンスフルだ。時には潮騒のように、時にはロマンチックな風のように音がゆれ動く。まるで体内時計の振り子のごとく揺れ、そのゆらぎは最終的には、のっぴきならぬ主人公ジェフリー・ラッシュの行動のゆらぎと折り重なっていく。

 7分にも及ぶ「大使〜ヘリコプターの追跡」という大曲が聴かせてくれる。音の変化そのものが、物語を語るかのようなスペクタルな音だ。静と動、情熱と収束、映像と音楽の官能がここにある。


 

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