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『ハンニバル』

森 世一
text by Seiichi Mori
意外にもオーソドックスな“ハンニバル交響曲”
 ラース・フォン・トリアーの『ヨーロッパ』のサントラは、冒頭、マックス・フォン・シドーの声から始まるが、この作品はアンソニー・ホプキンスの声から始まる。

 流暢なホプキンスの声の、品位の高さが予感させるように、そのあとに続く音楽も重厚でクラシカルな響きに満たされる。最近ではこれほどクラシカルなサウンド作りはないのではないか。ある意味普通すぎるかもしれないが、逆に言えば、非凡であるとも言える。

 全体が何やら葬送行進曲のように重い。暗雲たれ込めるという感じなのだ。奇をてらうこともなくオーソドックスな音の展開と配置。

 
 
『ハンニバル』
HANNIBAL
デッカレコード
UCCL-1006
2381円(税抜き)
音楽:ハンス・ジマー
1959年9月ドイツ・ハンブルク生まれ。これまでに70本以上の作品に携わり、映画音楽界の重鎮的存在で、現在はドリームワークスの映画音楽部門の責任者である。代表作は「ライオン・キング」('94、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞ダブル受賞)、「M:I−2」、「グラディエーター」ほか
 映画では、凄惨なシーンが続き、ラストでそれは頂点となるのだが、これをグロととるのか、はたまたクラリスとの愛の示し方として、結構俗っぽく観てしまうかで意見が分かれるところだ。だが、音楽そのものは、こうした映画の過激さに同調しない。あくまで甘いメロディで迫るか、底びえのする空気や、一歩も抜出せない袋小路を示すかのような、荘厳な宗教的楽曲で迫るのである。

 この映画はある種の新しさをねらいつつも意外にオーソドックスであったのではないか、音楽もまた、そのオーソドックスをはずすわけにはいかなかった。この“ハンニバル交響曲”は、サントラとしても記憶されるだろう。


 

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