「FILM」
「DVD」
「VIDEO」
「SOUND TRACK」
「BOOK」


 
『ナビィの恋』

森 世一
text by Seiichi Mori
圧倒的なライブ感覚の音の洪水
 昨年度公開の邦画では、1位2位を争う高評価の作品である。この映画の魅力のひとつはは音楽にあるのではないだろうか。映画の出だしの部分、西田尚美が島に向かう船で船頭が歌を口ずさみ、これを引き継ぐように音楽があふれ出す。

 このライブ感覚がいい。まるでジャズである。路上で、畳の上で、家の庭で、ピアノが鳴りフィドルが聴こえ、バンドネオンや西田尚美の声が跳ねる。フルートの音が空気を伝わってくる。音の群れが映像になじんで、観客の心を沖縄の地へ、物語そのものへと誘うのである。

 音楽の豊穣さに、舌づつみならぬ耳づつみを打つことになる。音が映像の中で実り、“音楽のある風景”を作りだす。そして島での競宴ならぬ狂宴は終わりをつげる。エンドクレジットに流れる島唄とマイケル・ナイマンの静かだが熱く流れるような音楽に、立ちつくすような感覚を覚えてしまった。

 
 
音楽:磯田健一郎
テーマ曲:マイケル・ナイマン with 登川誠仁
発売:BMGファンハウス
2427円(税抜き)
 変な話だが、語られた物語よりも音楽のほうが立体的な印象を残し、胸に迫った。西田尚美の歌で始まり、マイケル・ナイマンのピアノで終わるという構造が、そのまま物語の起承転結にオーバーラップする。映画音楽の勝利と言っていい。58分の音楽の旅へ出たい。


 

「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.