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『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』

森 世一
text by Seiichi Mori
少女の体温(体音)を感じる皮膚感覚の音楽
 映像の美しさに、描かれた少女の軌跡に、そして音楽の美しさに酔った。一人の少女のさほどドラマチックに展開するわけでもない物語が、驚くほどに観客の感情をスパークさせる作品だ。この映画で印象に残るのは、ローアングルで移動するカメラとリチャード・ロビンズの気品あふれるたった数分の音楽。ボクはこれだけで充分だった。

 この映画の音楽には“冬”と“春”がある。“冬”は雪どけを待つ冬であり、主人公は心の沈んだ少女だが常に“春”を予感させる。例えば、冬の林のなかで、木々の間から小鳥のさえずりやささやかな日差しが漏れるような静かな暖かさがある、そんな音楽。弦楽器やオーボエが微妙に絡み合う音、それが心の中にまで入り込み、ユラユラとなにやらうつろにさまよう感じがたまらない。実にせつなく、少女のこまやかな心情を表現するのだ。

 音楽が人間の体温(体音)にだんだんと近づき、次 第に音楽そのものがこの少女の分身となり、ついには彼女自身の存在と同化していく。それは同時にこの映画全体の“音”でもある。
 
 
A Soldier's Daughter Never Cries
(輸入盤)

音楽:リチャード・ロビンズ


 このCDに収録されているカンド・ヒートやあのディープ・パープルの音楽でさえも、いつしか映画に同化して春を待つ冬の音楽と化すのである。まるでリチャード・ロビンズの音楽に影響されたかのように。


 

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