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『天使のたまご 音楽編「水に棲む」』

森 世一
text by Seiichi Mori
抽象的ドラマと音楽がクロスする瞬間
 『アヴァロン』が公開中の押井守による'85年度作品。押井と同じくアニメ界の先端をゆくジブリの『ホーホケキョ となりの山田くん』が白い画調なら、こちらは黒の色彩が印象に残る。その“黒”を白く抜けて泳ぎ回る主人公の少女が美しい作品だが、このサントラが再発された。演奏は東京コンサーツ。

 セリフが極端に少なく、少女の夢の中の風景のように語られるこの映画は、とても抽象的な作品だ。その少女の感性みたいなものを、よく音楽は伝えていると思う。海の底に漂っている感じとでも言おうか。本来なら海の底なので息をしなければならないのだが、この音楽を聴いていると、なぜか呼吸ができて自然体でいられる、そんなイメージである。

 弦楽器とコーラスが奏でる音楽は『2001年宇宙の旅』をも凌駕するほどの空間を持っていると言っていい。この物語の抽象性には観客の思考回路を止めてしまう圧迫感があるのだが、その一方で音楽が気持ち良く解きほぐしてくれるのだ。
 
 
音楽:管野由弘
徳間ジャパン
1619円(税抜き)

 ドラマはあくまで観念的なのに、それに音楽が加わることで、 一瞬あるいは何度か、具体的な感情(例えば戦闘シーンにおける 高揚感のような感情)が呼び起こされる。 この時ほど音楽の素晴らしさを感じないわけにはいかないのだ。そういう意味で、このサントラは映画における音楽の意味をも問う傑作に違いない。


 

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