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| 『デカローグ』 |
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森
世一
text by Seiichi Mori |
| ≫ リコーダーの音色から、息づかいが聞こえてくる |
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'88年のクシシュトフ・キェシロフスキ監督作品。音楽は『ふたりのベロニカ』のズビグニェフ・プレイスネルで最近になって発売された(以前に日本盤は出ている)。
実に悲しい運命を背負う10個の物語に観客は10粒の涙を流すだろう。その劇的な物語を盛り上げるのが、プレイスネルの音楽だ。ヴァイオリン、ピアノ、リコーダー(縦笛)、ギター、ヴォイス(ソプラノ)をまるで俳優のように物語に配置する彼独特の手法が冴える。彼がそれぞれの楽器をいつくしむようにフィーチャーする様子が、まことに美しい。
この作品、全体にセリフは少ない。舞台も主人公たちが登場するごく普通の団地である。それなのに風景が色々な意味で語りかけてくる。語らせているのはもちろん監督だが、プレイスネルの音楽が数分あるいは数秒映像に絡むだけで、言うなればモノクロの映像がカラーに変わるくらいの変化が起きる。まさに音楽がもうひとりの主役なのだ。
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DEKALOG
(輸入盤)
音楽:ズビグニェフ・プレイスネル |
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例えば、冬、そして子供の事故死を描く第1話で、印象的に使われるリコーダーの音色。ビブラートするその音からは、息づかいまでもが聞こえてきそうなほどだ。それは冬の空気の冷たい息づかいでもあり、子供の息づかいでもあり、同時に映像のリズムの息づかいでもある。そんな瞬間がリアルに訪れる時、この映画にしかない確かな幸福を感じる。
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