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| 『セクシャル・イノセンス』 |
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森
世一
text by Seiichi Mori |
| ≫ フィギスの音楽的遊戯を楽しむ |
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脚本、監督、音楽をマイク・フィギスが手掛けたごくごく私的な心象風景が奇妙なまでの性的風景として語られる、きわめてけだるい感覚の映画なのだが、語られる音楽は実に肉感的。それは語られるフィールドの音楽がジャズでアフリカンな音だからだろう。
このアフリカンな音に近づけるためにヴォーカルというよりヴォイスをフィーチャーしていて、これが実に音の初源的な役割を果たす。性にまつわるアダムとイブの根源的な風景とダブってゆくのである。そういう確かな音の計算が、この映画の最大の魅力になっていることは間違いない。
フィギスの音楽とクラシック曲(主にピアノ)との激突を試みているのも本作の音楽の構造的魅力になっている。
シューマン、モーツァルト、ショパンとまったくもってオーソドックスなピアノ曲を並べてみせている。何とも美しくけだるいのだ。このけだるさそのものが現在だなどという単純なことではない。裸の肉体(心)に石があたれば傷がつき血が吹き出る。ラストにおいてそれまでのピアノ曲から変化してベートーヴェン第九交響曲を持ってきたのはまさしく血が吹き出る叫びであったに違いないのだ。美しいピアノ曲とエスニックな音の構造的配分。フィギスが託した知的遊戯を楽しみたい。
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