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『ひかりのまち』

森 世一
text by Seiichi Mori
映画音楽とは掛け替えのない「半製品」である
 打楽器のない、どちらかといえば弦楽器を主とした楽器編成でつむぎ出される音楽。それはひとことで言えば上品で乾いた音、音色に幅はなく実におとなしい。CDで聴く分には、その程度に違いないのだが、ひとたびウィンターボトムの映像とミックスされると、水が躍り出し、魚が跳ねて勢いを増すかのような感覚が生まれる。

 ウィンターボトムが都会そのものを、ひとつの人間ドラマの映像詩として、いくつかの輝く瞬間をとらえることに成功したとき、マイケル・ナイマンの音も見事に輝き出す。そういった瞬間の音と映像のミクスチャーの一つ一つに出会えたとき、感動が観客の胸の中に伝播するのだ。映像派ウィンターボトムの若さと、ナイマンのなにやら成熟してしまった音によって心が幸福感に充たされる。単純に言えば音がいい、映像がいいということにつきる。

 中にホーンセクションがあって、これがとてもやさしい音である。今回はナイマンでも、グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』のような、ボーイソプラノの歌が出てくるみたいな奇抜なことはなく、あくまでもこの映画のテーマである「詩」をうたいあげることに専念されている。
 
 
マイケル・ナイマン
wonderland
(輸入盤)


 ナイマンの本作をきくと、映画音楽は「半製品」であることが良くわかる。それはまた、逆説ながら本作において、ナイマンは映画における音楽の重要性を十二分に発揮したと言えるのだ。ぜひこの「音」を「映像」と共に堪能していただきたい。


 

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