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『オルフェ』

森 世一
text by Seiichi Mori
今世紀に輝く一枚
 音楽アルバムとしても、映画音楽としても、今世紀に輝く一枚であることは間違いない。そのくらいすごい音楽である。それはこの映画が音楽映画の歴史を内包していることによる。それはまたブラジル音楽史(サンバからボサノバ、そしてラップへ)にも由来している。

 たとえば映画のオープニングで、子供たちにせがまれて、日の出と共にかなでられた超絶技巧のギターによるボサノバのメロディーが、後半には50年代のアメリカの大河ドラマのようなフルオーケストラ音楽に変化する。こうしたメロディーの歴史的な変遷が何度も現れては消えることで、全体的になんとも奇妙な音の融合の印象を受ける。これがかなりすごい。CDであらためて確認する。

 たとえば『オルフェのテーマ』というサンバ(オーケストラではない)は、まずはサンバ・ファンク・ミュージックに変質し、ついにはラップにまで変化をとげることになる。この世で一番みにくい曲は何かと問われれば即「ラップ」だと答えてしまう自分なのだが、こうくると話は別 で、ひとつの音楽としてまさしく消化されているこの感覚に狂喜した。
 
 
カエターノ・ヴェロージ
ワーナーミュージックジャパン
2520円(税込み)


 この映画は悲恋で終わる。その極彩色で塗り込められた音楽のカオスの中にブラジルの過去と未来を見る。人種問題、貧困、ギャングなど、それはまたブラジルの生命力そのものである。その根底に流れるサンバ・ミュージック。その未来、カオス。そんなサンバのリズムと悲恋に涙する。すばらしいアルバムである。


 

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