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『フェリシアの旅』

森 世一
text by Seiichi Mori
主役のように際立つ、柔軟でこぼれ落ちるような音
 ここでマイケル・ダンナが創造した音楽はいったいどんなジャンルに属するのか? ジャズか、ロックか、現代音楽か? いいや、どこにも属さない。しいていえばフェリシアの旅ワールドというしかないだろう。ジャンルを消滅させるほど、音楽はアトム・エゴヤンの映画に入り込んでいる、まるで主役のように。

 監督とはいかに独自の世界を作るかに腐心するもの。そんなエゴヤン監督の前に登場したのがマイケル・ダンナであった。60年代の何の変哲もないTV主題歌のような音楽、ケルト・ミュージック、レコード盤がたゆんでそこを針が通 過するゆがんだような音、行進曲らしきものなど、空気を横切るような前衛音楽。もうその音楽が流れただけでそこはフェリシア・ワールドである。これほどまでに柔軟で、音そのものがこぼれ落ちてしまったような音楽。そんな音のサンプリングでモンタージュがなされる。しかしそのモンタージュは木を1本1本植えるように、木の間隔とか高さが整然としていて実に幾何学的である。
 
 
マイケル・ダンナ
BMGファンハウス 2427円
しかも、そんな理路整然とした音楽に、まったく唐突に、ホラー映画の恐怖を呼び込むような音楽が時々登場するから、より整然さが際立つことになる。

 さらに、そうした余り聴いたことがない、独特の音楽の合間に、まことに美しい60年代を思わせるボーカルが流れて来るから面 白い。そういった音のモンタージュが、この映画そのものの大きな力になっているのは間違いない。


 

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