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『ナインスゲート』

森 世一
text by Seiichi Mori
やさしくほほえみかける音のバックに異様なモノが潜んでいるような魔物的魅力
 おそらくこの映画はハリウッドメジャーをねらったものであろうが、そうはなっていない面 白さがある。音楽も例えばタイトルロールの曲なんか、ジョン・ウィリアムスばりの曲をねらったようなふしがあるのだが、なぜか音がズレていく。映像のズレ、音楽のズレがロマン・ポランスキー的映画世界をかもしだしているのだ。

 これだけオカルティックな材料が豊富にそろった内容なのだから、もっと全体のカッティングのスピードをあげれば、上質のエンタテインメント・ホラーになったはずである。

 音楽もジョン・ウィリアムスのようにうたいあげれば、それなりに盛り上がるはずなのに、まるでそうはいかない。全体的にはストラビンスキー的と言っていい。かくて映像と音楽が何か異様な収束感と解放感で満ちた不思議なコンセプトの映画が出来た。

  ストラビンスキーと言えば、知的で複雑な都会派音楽という感じだが、そこに女性ボーカルが入ってくると、とたんに土俗的な「地の叫び」のような雰囲気になり、
 
 
ヴォイチェック・キラール
カルチュア・パブリッシャーズ
2400円
音楽が我々にやさしく、のりかかって来てしまう。まるでモナリザの絵のようにほほえみかけてくるのだが、どうしてやはりバックにあるのは複雑で異様なモノに他ならない。きけばきくほどそんな魔物的な魅力に引き込まれてしまう。ポーランド出身という、この作曲家のこの音楽、現代音楽の1曲としてではなく、本作の映画音楽として出会った喜びが大きい。その不思議なまでに官能的な音楽が、完璧にポランスキーの映画音楽として息づいているからだ。


 

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