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『季節の中で』

森 世一
text by Seiichi Mori
西洋が混じることで、逆に東洋が聴こえる
 単純に映画がスバらしかったから、CDも聴いてみた。ベトナムの音楽がギッシリとつまっていた。ベトナムの民族楽器の固有で古風な音に弦楽器がほんのちょっとだけ味つけされ西洋風になる。すでに詩的な音を持つベトナムの楽器が、そのことでより聴きやすく、またより詩的になる。この映画の持つ詩的な造形美に限りなく近づいた音なのだ。こよなく愛せる音、その透明度、透明感とでもいったらいいのか、まぶしいぐらいの自然の音に聞きほれてしまう。

 たとえば津軽三味線を聴いて東洋的なものを感じるだろうか? 日本、もっと言えば東北は確かに見えてくるかも知れないが、 もっとグローバルな“東洋の”といったものは見えてこないのではないか? このホロウィッツの音楽はまさしくグローバルな東洋の音へのいざないである。ここでの音楽は単純にベトナムの楽器やベトナムの音楽をコラージュしたものではない。
 
 
リチャード・ホロウィッツ
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント ¥2,400
大へん良くこなれているのだ。それは古風でもあり、ジャズでもあり、『峠のわが家』をきくようにノスタルジックでもある。そういうふうに、すべてがいっしょに混在し、ロマンの香りが漂う。実に心の奥にジャスト・フィットする。

 まったく聴いたこともないベトナムと西洋の出合う音。ワールドミュージックの傑作。


 

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