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『歌う色男、愛・ラブ・パラダイス!』

森 世一
text by Seiichi Mori
これを官能と言わずして何と言おう
 2年前、東京映画祭でインドの監督マニラトナムに質問がとんだ。「この映画はなんで歌と踊りが入っていないのか?」監督の答えは「これはインターナショナル・バージョンだから」。なるほど、その映画は全編踊りのシーンを抜いて、いわゆる物語だけの普通の(?)映画の状態で上映されたのであった。

 通常のインド映画(マサラ・ムービー)には歌と踊りがあり、それだけで単純にCD1枚分の時間だから、上映は3時間もザラ。というわけでこの映画も歌と踊りが満載の楽しい映画である。ご多分に漏れず、男と女のかけ合いとダンスが全編に散りばめられた恋と愛の物語。

 インドの楽器はシタールとタブラ(打楽器)で、それにシンセとヴォーカルが加わり、そのほとんどが愛を語ったものになる。歌も踊りも、男が追っかけると女が逃げるみたいな単純構造で、男女が歌でかけ合うものである。しかもインドのヴォーカルは打楽器的なハミングや、鳥の鳴き声をまねてそれを曲に取り込むなどの特別な手法があり、これが面白い。たとえば単純に男女の掛け合いと言っても、 このCDの3曲目と4曲目ではまるで違う。前者では男も女も諭すように、まるでスズメがチュンチュンと語りかけるように美しい声で歌うのだが、
 
 
CHARWALI BAHARWALI(輸入盤)
アヌ・マリク
後者では、力強く打楽器をかき鳴らすアフリカンな音の中心に、女性の声もあの可愛い調子ではなく、太く力強くうったえるものになっている。

 そんな風に自在にあやつるヴォーカルも、もはやボディーランゲージと化しているのだ。肉体と声の一体化、これを官能と言わずして何と言おう。これに弦楽器が加わってまさに音のパラダイスとなる。


 

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