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『ヒマラヤ杉に降る雪』

森 世一
text by Seiichi Mori
音楽が自然そのものであるかのように聴こえてくる
 これも戦争をモチーフにして、心のひずみを描いた異色作。工藤夕貴がインタビューで「日本人が応援してくれるのが一番です」といった言葉が印象に残る。

 フラッシュバックを多用した技巧的手法が目立ったのだが、そこにある映像は雪と湖とヒマラヤ杉、つまり人間に重くのしかかってくる自然である。これがこの音楽そのもののテーマであり、見事なまでにオーケストレーションで具体化されている。木漏れ日の音、冷徹なまでの湖の音、生い繁るヒマラヤ杉の音が聴こえてくるのだ。打楽器やヴォーカルを多用する、この音楽が、自然そのものであるかのように聴こえてくる。技巧的な映像と対照的に、正攻法で攻めた音楽が、逆に非凡に思えてしまった。

 映画からこの音楽を取り出してしまうと、
 
 
ジェームズ・ニュートン・ハワード
ユニバーサルミュージック
¥2427

(C) UNIVERSAL
MUSIC CLASSIC
単純なヒーリングミュージックにみえてしまう。しかしその奥からは、1945年戦時下の人間の瞬間が、刻み込まれて封印されてしまった歴史の運命のような、孤独とやすらぎが、もがくように聴こえてくる。映画で語られた以上に、この物語を音楽が語っているのだ。

 そのドラマチックな音に耳を傾ける。至福の時である。27曲目までたどりつくと、タイムトンネルを抜け出てきた歴史のゆらぎが聴こえるようであった。この音楽の扉をぜひ開けていただきたい。


 

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