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『白痴』

森 世一
text by Seiichi Mori
映像に溶解してしまった音楽
 誠にヴィジュアル的な映画である。にもかかわらず純日本的な趣と重みがひしめいている。特に浅野忠信と甲田益也子の関係が好きだ。坂口安吾の原作を今に翻訳した映画だが、現代ながら子ギャル族とか渋谷系とかの登場しない、まったく今までにない世界をみせてくれるのが心地良い。手塚真監督の未来派ヴィジュアリストを名のりながら、むしろ古風でもあったりする映像世界。そこに作家としての可能性がみえてくる。

 わりといいかげんなことを言ってしまえば、ここに登場する音楽には昭和30年以前の香りが漂う。室内楽の心地良いロマンのたたずまいがする。ひたすらやさしい音楽がかなでられている。

 ところが、この音楽をすくいあげようとしても、それは手塚世界に、強烈に言えば、溶解してしまっている。CDで聴いて改めて、これほどまでに美しいものが流れていたことを知ったのである。映像の中に、
 
 
橋本一子
ビクターエンタテインメント
¥3095
まったく化学反応を起こさず溶解してしまった音楽といっていい。 手塚と橋本で相当のディスカッションをしながら一曲一曲を作っていったとされるゆえんである。改めて映画音楽の世界観みたいなものをみせてくれた一枚として心にとどめておきたい。

 ボーカル曲が途中ジャズによって、音楽が爆発するところがある。これをサービス精神にとったらおこられそうだが、ここの部分、けっこうナウイ(!)と言っておく。


 

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