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『御法度』

森 世一
text by Seiichi Mori
うごめく空気や水のように…
 大島渚のものとしてはずいぶんわかりやすいドラマで、初めて単純に面 白かったといえる作品だった。特に剣道のシーンがけっこうホットなのである(あまり知られていないが、新幹線の中で大チャンバラをやった『ハンテッド』というクリストファー・ランバートの主演作で殺陣をやった人が担当している)。とはいっても大島作品独特の乾いた映像も健在で、そのふたつが混合された映像感覚と、音楽コンセプトが見事なまでに合致した坂本龍一作品である。

 テープの逆回しの様な音から入る前衛的な作品で、全体的には実に乾いている。しかし単純に現代風な感覚などとは言いたくない。そうした感覚は含みつつも、どことなくホットな音が点在しているのだ。スクリーンの中では血が飛び散り、肉を切らせ愛憎がまとわりつく。でも大島渚はあくまでも静謐な画でそれらをとらえる。それは水とか空気の静寂な感覚を思わせる。
 
 
坂本龍一
ワーナー・ミュージック
¥3059
しかしその空気や水はうごめいているのだ。

  坂本龍一は音楽映画の作曲者ということではまだまだ過渡期にあるような気がするのだが、本作はひとつの最高作になるかも知れない。作品にはめぐり会わせというものがある。世界的スケールで活躍しているとはいえ、こんなにいいめぐり会わせもめったにないだろう。テーマ曲は何度きいても重く美しい。ここでも映画と音楽、音楽と映画の因果 関係の重要性が感じられた。


 

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