大ヒット映画にあやかって、柳の下にドジョウが何匹もいるようなストレートビデオ的まがいものが当たり前のご時世には信じられない話だが、その昔、曲者プロデュサー、ディノ・デ・ラウレンティスの力は強大だった。70年代に彼が仕掛けた巨大プロジェクト『キングコング』は、いまや悲劇の世界貿易センタービルをよじ上るリメイク版コング映画。豪腕ラウレンティスは、自作が壮大な空砲に終わることを予期したかどうかは別として、便乗企画を寄せ付けず“イタリアのまがいもの”をオクラに追いやった。幻の珍品を発掘・復活させた配給関係者には拍手を惜しまないが、さらに画期的なのは、日本語吹き替え版による公開だ。広川太一郎の「一人芸」による、このトンデモ映画の“救済”をきっかけに、是非、日本語吹き替え版の楽しさを拡大してほしい。
ぼくらにとって映画とは、かつてTVの吹き替え版洋画劇場だった。原語のニュアンスを聞きながら、外国気分に浸るのもいいが、情報量も多く、声優の味のある“演技”に聞き惚れる楽しさは格別だった。なかでも広川太一郎の「しちゃったりなんかして〜」のアドリブ的な話芸は絶妙で、どんな駄作であっても、まったく別のいとおしい映画に再創造してしまう摩訶不思議な力を持っていた。近年でも、あのTVシリーズの評価をドブに捨てた駄作・劇場版『ビーン』のビデオ化時、広川は開巻、ヒゲを剃るビーンの映像に「アゴ剃りっ、ハナ剃りっ」と付けて、いきなり原語版にない笑いの渦に陥れてくれた。そして、超Z級コング・パロディでは「この映画ってナニッ?」をキーワードに、チープな特撮とダサイ演技を自虐的に突き落とし、自問自答する彼の芸は健在で、可笑しさ、バカバカしさを超えて感動的ですらある。いや、堅苦しい評価をしてはいけない。広川太一郎は、きっと言うだろう。「君、君、君ィ〜、そんなことはどうでもいいのっ。黙ってゴージャスな吹替えに酔えってばっ!」。 |
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QUEEN KONG 監督・脚本:フランク・アグラマ 出演:ロビン・アスクイズ/ルーラ・レンスカ/バレリー・レオン/ロジャー・ハモンド 吹替え版声の出演:広川太一郎/小原乃梨子/井之上隆志/原田修一 1976年イタリア、イギリス 配給:アルバトロス
●アフリカの奥地に向かった撮影隊が、伝説の巨大なメスゴリラ、クイーン・コングに遭遇。いけにえとして捧げられた映画スター、レイ・フェイに恋をしたコングだったが…。映画完成直後、トラブルを恐れた会社が公開を自粛し、そのままフィルムの行方がわからなくなっていた幻のカルト作がついに公開。
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