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『千と千尋の神隠し』

加藤久徳
text by Hisanori Kato
“お風呂”で、生きていることの素晴らしさを実感
 口で語るのは容易いが、文章にするのは難しい作品だ。イマジネーションの壮大さに圧倒され、宮崎駿にはまだここまで引き出しがあったのかと、正直あきれた。ドラえもんのポケットみたいな人だな。

 お風呂屋の内装・外観とも、どこかで見たような懐かしさを感じる(まる3年ほど風呂屋=お湯屋さんに行ってないせいもある)。しかし、自分はこれほど壮大なお風呂に入ったことはない。それゆえに圧倒され、夢見心地にされるのだろう。しかし、それはあくまでも男の心理によるもので、このお風呂屋は男風呂である。ゆえに湯女(ゆな)がいる。千尋のバックにも“回春”という効能書きがしっかり浮かんでいたから、この“油屋”という高級銭湯は、まだ家庭風呂というものがなかった江戸時代初期の、いかがわしさと香しい風情の両面が備わっていた当時の風呂屋の雰囲気を持っていて、それでいて吉原遊郭の享楽ぶりまで備わっている。淫びで猥雑だ。それが楽しくてどうしようもない。

 本編中の圧巻は、番台のカエルたちの不手際で、決して通してはならない不潔な神様“オクサレさま”が最高級の薬湯に浸かって“この世のアカ”を全部落とすシーンの気持ちよさだ。神様を使って、これほど生きていることの素晴らしさを表現したアニメーションなんて過去にあったろうか。

 結局この作品は、風呂好きが一番楽しめるというのが、僕の結論かもね。

©2001 二馬力・TGNDDTM
監督・原作・脚本:宮崎駿
音楽:久石譲 主題歌:木村弓
声の出演:柊瑠美/入野自由/夏木マリ/菅原文太/内藤剛志/沢口靖子
2001年日本
2時間5分
配給:東宝


●現代っ子の少女・千尋が、人間が入ってはいけない不思議の町に迷い込み、元の世界へ戻るために働き始める姿を描く。『もののけ姫』の持つ記録を軽々と破って大ヒット中。


http://www.ntv.co.jp/ghibli/
sennokami/index2.html


 

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