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『千と千尋の神隠し』

清水 節
text by Takashi Shimizu
“いま”を生きるヴァーチャル世代の、生々しい葛藤
 宮崎駿は10歳の少女へ向けたというが、これは“いま”を再構成して世間知らずなヴァーチャル世代にも現実感を取り戻させようというしたたかなファンタジーの秀作だ。これから“世間”へ出なければならない少女に体験させる不思議の世界とは、逃げ込んでしまいたいような別世界ではなく、同時代を生きる者たちがよく知る現実を単純明快に再構成した世界のシミュレーション・モデル。そこには、尊さも醜さも、優しさも恐ろしさも、清濁あわせ呑んだ形で凝縮された“いまの日本”が、かろうじてぼくらのDNAが記憶する懐かしき建物や景色に包まれ、しかも、いとおしさをもって存在していた。

 なかでも“ストーカー”を彷彿とさせるカオナシと“引き篭もり”そのものである坊というキャラ、そして“フリーター”を思わせる働かなければ“身体が消えていく”という設定に、ぼくらはよく知る同世代の人間たちの顔を思い浮かべる。この異世界での出来事を通し、こんなことになってしまった島国の現状を、それでも、変えていこう、愛でよう、信じようとする前向きな意志を感じるのだ。ここにはカタルシスを与える戦いはないが、生々しい葛藤がある。ただし、千尋が現実を体験していくプロセスが性急に展開しすぎる。仕事場での大人たちとの軋轢や、カオナシとの接触による世間の恐ろしさを、千尋にもっともっと体感させたかった。

©2001 二馬力・TGNDDTM
監督・原作・脚本:宮崎駿
音楽:久石譲 主題歌:木村弓
声の出演:柊瑠美/入野自由/夏木マリ/菅原文太/内藤剛志/沢口靖子
(2001東宝)125分


●『もののけ姫』の記録的な大ヒットから4年、宮崎駿監督の待望の新作が登場。10歳の現代ッ子・千尋が、迷いこんでしまった不思議の町で、働きながら生きていく力を取り戻していく姿をつづるファンタジー。覚和歌子&木村弓による、透明感あふれる主題歌が作品の感動を盛り上げる。


http://www.ntv.co.jp/ghibli/
sennokami/index2.html


 

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