映画作家というよりも、無類の映画狂である和田誠が5年ぶりに発表した新作は、典型的な“巻き込まれ型サスペンス”。ジャズのバンド・マスターを演じる真田広之が、右手に香港美女のミシェル・リー、左手に商売道具のトランペットを持って、夜の東京を逃避行する話である。
映画製作とは無関係な世界からスタートした映画狂が(アニメーションを作ったことのある人だから、まるっきり無縁な人ではないのだが)、ここまで巧みな語り口のサスペンス映画をヒョイっと作ってしまうと、ただもう憧目するばかり。ジャズ特有の粋な雰囲気が大人の映画を感じさせる。モノクロでないのが残念だが、銀座の街並みのネオンの効果などに工夫の跡が見えて、カラーも捨てたものじゃないなと勝手に納得! 随所に現れる過去の名画の技法も楽しい。往年のアクション・スター、真田広之に自然体でアクションをさせた点でも特筆ものだ。
作る和田が映画狂なら、見ているこっちも映画狂。気に入ったのは、この映画が“カメオ出演”を売り物にしていることだ。“カメオ出演”とは『八十日間世界一周』でプロデューサーのマイケル・トッドが最初に使った言葉。主要キャスト以外の脇役をスターや名優で固めることで、いわゆるオールスターと同義語であり、出演そのものを売り物にすることだ(語源はもちろん宝飾品のカメオから来ている)。現行で使われる大スターのノン・クレジット出演のことを指すのではない。ノン・クレジットのスターをポスターに載せて宣伝するのとも違うぞ。
『真夜中まで』の真田とミシェルは、夜の10時35分頃から午前零時までの小さな世界旅行をして、いろんな人に出会う。唐沢寿明、三谷幸喜、もたいまさこ…。遭遇する彼らがスターか名優かは見る方の判断だが、それは『八十日間世界一周』の40人の名優も厳密に考えれば同じだった。しかし、映画のグレードをアップするという点では、『真夜中まで』はかつてないほど『八十日間世界一周』の“カメオ出演”に近い。全員に見せ場を設けている点がそれだ。
アメリカ人も忘れてしまった本当の“カメオ出演”を、日本人の映画狂・和田誠がやってのける。この人は映画を心底から理解している人だ。 |
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監督・脚本:和田誠 脚本:長谷川隆
撮影:篠田昇
出演:真田広之/ミシェル・リー/岸部一徳/國村隼/春田純一/斎藤晴彦
1999年日本
1時間50分
東北新社
●多彩な才能を発揮する和田誠が『怖がる人々』から5年ぶりにメガホンをとった今作は、監督自身による初のオリジナル脚本。ジャズ・トランペッターと外国人クラブのホステスとの逃避行を、ジャズの名曲にのせて描き出す。

http://www.tfc-movie.net/movie/mayonaka/
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