この作品は、劇場用映画ではない。デジタルBS局・BS−iのソフトとして製作され、すでに放映は済んでおり、ジャンル分けとして“デジタル・ハイビジョン・ドラマ”の冠が付けられている。それを一般劇場で“DLP システム”で上映するものだ。謳い文句は“フィルムでもビデオでもない第三の映像”。
『告別』での僕の印象は、謳い文句は嘘ではないということだ。ジョージ・ルーカスが率先して進めるDLPシステムがフィルムにとって変わる日は遠くないが、映像の魔術師・大林宣彦が手掛けた、『告別』の優れた映像完成度を見せられると、僕のようなフィルム至上主義者でさえ、驚異を通り越して絶望すら感じてくるのだよ。
原作は赤川次郎の『長距離電話』。題名の『告別』が示すように、主人公(峰岸徹)が過去との決別を成すものだ。リストラ直前の中年男が、高校生時代の友人やガールフレンドと、古ぼけた電話ボックスの中で30年の時を超えて交信を果たすもの。主人公が時の彼方に忘れ去っていた苦渋の思い出を、何かの力で思い起こさせられる。それが神か悪魔か、何かの科学的根拠によるものか、理由は提示されない。論理的でなく、見る側の感性に頼る作品であり、そこらへんが大林監督の変わらぬ若さを感じさせる。そして、ハイビジョン・カメラを使ったという以外、実験精神がほとんどない大林映画も珍しいと思う。しかし、二枚目スター・峰岸にくたびれ果てた中年営業マンを演じさせる姿勢に関しては、クールな実験精神を感じた。100分間の上映時間の間、彼の姿はひたすら哀愁の淵にあった。あまりにもクッキリ映りすぎるハイビジョンの映像効果は、スケッチのように登場する人々をとても美しく見せるのだけど、峰岸だけが老いの哀しさ、醜さを際立たせて演じているようで、自分には辛かった。大林監督の作品世界は元々どこか残酷さが投影されるのだが、今回は峰岸ひとりに、人間の全てのマイナス面をおっ被せたようだ。好意的に見れば、峰岸が役者根性を見せた最初の“映画”ということになるのだが…。
どういう偶然か、現在と過去(あるいは未来)の人間が無線機や手紙を使って交信する作品が増えている。今年だけでも韓国映画の『リメンバー・ミー』(無線機)や『イルマーレ』(手紙)が相次いで日本公開される。そして、それぞれ力の入った佳作となっている。どの作品の出来が上とか言うよりも、どれを先に見るかで評価も変わるはずだ。この『告別』は自分にとっては一番あとであり、割りを食った感じがしないでもないが、過去を振り捨てて現在の家族を取ろうとする主人公の姿に、大林監督らしさを見て取ることができる。その点が、この人好みの“残酷さ”なのだ。 |
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監督・脚本・編集:大林宣彦
原作:赤川次郎
出演:峰岸徹/清水美砂/裕木奈江/勝野雅奈恵/津島恵子/小林桂樹/並樹史朗
2001年日本
1時間44分
企画:BS-i、オフィス・シロウズ
● デジタルハイビジョンによる本格ドラマをDLPシステムで上映する特集企画『ハイブリッド・ムービー2001』の中の1作。ほかに長崎俊一監督作『柔らかな頬』、大森一樹監督作『最悪』、篠原哲雄監督作『女学生の友』が上映される。

http://www.bs-i.co.jp/main.html |
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