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『点子ちゃんとアントン』

杉森直行
text by Naoyuki Sugimori
“幸せで胸がいっぱい”になる、映画的な魅力にあふれる会心作
 『ふたりのロッテ』で有名なエーリヒ・ケストナーの児童文学の映画化。10歳の少女と少年が織りなす友情を軸に、家族の絆を描く感動の物語だ。宣伝広告に<文部科学省選定>などの記述がある通り、間もなく夏休みを迎える子どもたちや、家族連れには最適な映画であることは間違いないのだが、その枠組みに捕らわれない強固な魅力を秘めた会心作である。

 長編デビュー作『ビヨンド・サイレンス』で注目を集めたカロリーヌ・リンク監督による第2作。本作のスタイルと描写は、極めて精緻で冒険的である。主役の2人の子どもたちが喜怒哀楽の感情を爆発させるがごとく、映画そのものも108分の上映時間のなかで、アクション、悲劇、コメディ、サスペンス、ロマンスなど、変幻自在に表情を変えていく。深夜の駅構内における心躍るミュージカル・シーン、月夜が照らすプールサイドで愛をささやき合う大人たち、逃走車を追って、突如として草原のなかから出現するヘリコプターなど、素晴らしいシーンを抱えるエピソードを積み重ねながら、物語はやがて訪れる大きな感動に向かって進んでいく。

 そして、これらの描写を際立たせているのが、作者のワン・ショットへのこだわりである。手持ち撮影による迫力あふれるアクション、滑らかな移動撮影が生み出す躍動感や疾走感、自然光を利用したリアルな日常風景、影絵を用いての幻想の世界への誘い…。映画が持っている力、それらのすべてを吸収しようとする作者の意気込みと胸の高まり。そして、社会に向けた断固とした温かい眼差しが、物語が発する感動をより大きなものにしている。ラスト・シーンで「幸せで胸がいっぱい」とつぶやく点子のセリフを、リンク監督に向けて贈り返したい。
 
PNKTCHEN UND ANTON
監督・脚本:カロリーヌ・リンク
原作:エーリヒ・ケストナー
出演:エレア・ガイスラー/マックス・フェルダー/ユリアーネ・ケーラー/シルビー・テステュー
1999年ドイツ
1時間48分
配給:メディア・スーツ


● 世界中で親しまれている児童文学の名作を映画化した、心暖まる1作。舞台を現代に移し、10歳の少年少女の目を通して現代の家族が抱える問題を、優しい眼差しで描き出していく。2000人を越す応募者の中から選ばれた主人公の2人を演じるエレア・ガイスラーとマックス・フェルダーがかわいい!


http://www.tenko-anton.com/


 

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